第21章 隠れ家 1
善逸の涙も止まり、二人は並んで歩く。
「覚悟か……」
善逸が考え込むように呟いた。
「確かにそこには百万年たってもいきつけねえわ、俺。怒りだと思い込んでた」
「いいんだよ」
「え?」
「人の考えなんてわかんないでしょ。私だって善逸の考えてることわかんないし」
「いや、高確率で言い当てられてますが……」
「ははは。ただ、何考えてんのかなーって考えることが大事なんじゃないかなって思う。いつも考えてると疲れちゃうけどさ、たまには考えようよ。音が聞けるんだから」
「ん。わかった」
「でも、俺、光希にそんな覚悟させるの、嫌だな」
「何で?私は別に平気だよ」
「むぅ……つまり、俺が浮気なこと言ったから、悲しくて、へこんで、傷付いたってことだもんな」
「そう……だよ」
「お前、本当に俺のこと好きなのな」
さっきとは打って変わってにこにこし始める善逸。
「何故、そこに結論がいくの」
「だって、そういうことだろ」
「まあ……それが大前提ではあるけど」
「ああ、もう!硬いの!冨岡さん家行ってから光希、頭カッチカチ!」
善逸が足を止めて光希の頭を捏ね回す。
「俺が浮気な事言ったから悲しくなっちゃったんだよね?ごめんね?ついうっかりだから、そんなこと本気で思ってないし、わかってるよね?でも、ごめん、本当にごめんね」
「う、うん」
「あのね、なんでそんなに悲しくなるかっていうと、光希は俺のこと、凄く好きだからなんだよ。だからね、その度に俺を怒ればいいんだよ」
「うん?」
「ぶん殴って、この馬鹿って泣いて怒ればいいじゃん。傷付いちゃうのかもしれないけどさ、そこはごめんだけどさ、俺も謝るよ。全力で謝る。光希が許してくれるまで」
「………」
「なんで光希が覚悟して気にしないって意地張って、一人で抱え込んで頑張ろうとするの?俺が悪いんだから俺を叩けばいい。簡単じゃね?」
「なるほど、いい作戦だね」
「だろ?」
「善逸にも覚悟が出来たってことだもんね。ボッコボコにされる覚悟が」
「………はい」
善逸は二度と浮ついた発言をしないようにしようと心に誓った。光希と、自分を傷付けないためにも。
とりあえず二人は隠れ家に付くまでに仲直りをすることが出来た。