第20章 祝宴
「そろそろお開きにしましょうか」
光希が切り出す。
「義勇さん、もうお酒お終いです」
「………」
「千代さん取り上げて」
「はいはい」
「善逸、まだ寝るなよ。部屋まで歩けよ」
「おー……」
「お前はまだ大丈夫そうだな」
「んー……、ホロ酔いって感じですね」
「いつもより少ないか」
「そうですね」
「月見酒、付き合え」
「明日仕事ですよ、義勇さん」
「大丈夫だ」
「明日の任務で義勇さん死んだら俺、一生後悔しますよ」
「………」
「少しだけですよ」
千代に渡した酒を返してもらい、縁側に出る。
並んで月を見ていると、眠そうな善逸も顔を出す。
「二人で飲むのは駄目です」
善逸が光希と義勇の間に入る。
「いつもより……、って何。いつも飲んでるの?冨岡さんと」
「たまにな。休み前とかに少しだけだよ」
「……冨岡さん、光希に手ぇだしたら駄目ですよ」
「おい、善逸。失礼なこと言うな」
「こいつは、俺のですからね」
「酔ってるな……すみません、義勇さん」
「いや、気にするな」
義勇は月を見る。
少し欠けた月が綺麗に光っている。
善逸は縁側に来たものの、うとうとしている。
「おい、寝ちゃうぞ、善逸。客間に行くぞ」
「やだ。二人で飲むのは駄目だ」
「大丈夫だったら。お前がここで寝ちまうほうが駄目だ」
「寝ない!起きてる!!」
「義勇さん、善逸寝かしてきます」
「いい、その辺に寝かしておけ。後で俺が運ぶ」
「すみません……」
光希は義勇のぐい呑みに酒をつぎ、自分のお猪口にも少し入れる。
「あの歌……作ったのはいつだ」
「ええと、六つか、七つくらいの時だったと思います。俺たち天才じゃないですか?あはは」
「ああ、天才だ」
「わーい、褒められた。他にもいっぱいあるんですよ。ほとんど覚えてないのが残念です」
「思い出したら歌ってくれ」
「はい。でもこいつがいないと歌えないのばっかなんです」
「ならまた呼べ」
「はい」
「我妻は、想像してたよりいい男だった」
「ありがとうございます」
「想像での評価がだいぶ低かったのもあるが」
「あはは。それは何よりです」
縁側に転がって眠る善逸を、光希と義勇が優しく見つめていた。