第20章 祝宴
「あー」と光希が声を出すと『あー』と善逸が合わせて三度でハモる。
音を確認して、せーの、と光希が指揮を取ると二人はハモリながら歌い始めた。
「おつかいにーいきましょおー」
『おつかいにーらーらららー』
「かわをーとんだーらー」
『かーわー とんでー』
「おっこちてーみずびたしー」
『おっこちてーみずびたしー』
「あーららこららー」
『へんてこてこてこ』
「みずびたしー」
『みずびたしー』
「せんたくはーたのしいなー」
『せんたくはーらーらららー』
「たらいーのーなかにー」
『たらいー なかにー』
「おっこちてーみずびたしー」
『おっこちてーみずびたしー』
「あーららこららー」
『どうしてどしてー』
「みずびーたーしー」
『みずびーたーしー』
「ちゃんちゃん!おしまい!」
光希が頭を下げると千代が拍手をしてくれた。
歌詞や音階は子どもらしいものだったが、二人のハーモニーがとんでもなく美しかった。
善逸は顔を赤くして座る。十六の男が『らーらららー』は厳しいだろう。彼の勇気は褒め称えられるべきである。
主旋律を光希が歌い、善逸が飾りのようにハモっていた。子どものころから光希主体で遊び、善逸が巻き込まれて振り回されていたのがうかがえる。
その二人の関係性がずっと続いていて、今でもこうして嫌々ながらに光希の我儘に付き合ってやっている優しい善逸。
辛かった仕事を、楽しい歌にすり替えて寄り添い合って乗り切っていた。その軌跡が見えて、義勇はこんな歌なのに何故かじーんと感動した。
「いい歌だ。今度柱合会議で歌え」
「あはは!はーい!」
「ぜったい嫌ですっ!」
温かい雰囲気の中、夜が更けていった。