第20章 祝宴
祝宴は続き、二人の幼少期の話でひとしきり盛り上がった。
「頼む、もう本当にやめてくれ。俺、今後ここに来られなくなる」
善逸がそう言って根を上げたので、「まだまだ序の口なんだけど」と光希は勘弁してやった。
「変な話はしなくていいよ。歌ってよ」
「歌ー?」
「光希は歌が得意なのか」
「こいつ、うまいんですよ」
「えー、それほどでもありますよ!」
なんだかんだでわりと酒を飲んでいる光希は、機嫌良く流行りの歌を歌い出す。
透き通った声で相当うまい。
「うまいな」
「光希ちゃん、凄いわ。知らなかった」
「えへへー」
にこにこと笑う光希。
「あ、善逸も歌うまいんですよ」
「お前の後に歌いたかねえよ」
「歌えよ、ほら」
しぶしぶ善逸も歌う。
絶対音を外さない善逸も、きれいに歌いあげる。
「二人とも凄いわね!お金取れるわよ」
「ありがと、母ちゃん。鬼殺隊やめたら歌手になります」
「こんな特技があったとはな」
「ふふふ、あったんです!」
「そうだ、善逸、あれ歌おうぜ」
「なんだ?」
「えっと……なんだっけ、おつかいに〜いきましょ〜……」
「よりによってあの歌かよ……、絶対に嫌だよ恥ずかしい」
「かーわーを飛んでー?あれ、なんだっけ」
「違う、かわーをとんだーらー、だろ。俺は歌わねえぞ!」
光希は昔の歌を思い出そうとした。
「ちょっと、時間ください!」
そう言って光希は嫌がる善逸を連れて部屋の端へいく。二人でちょこんと座って歌を思い出そうと真剣にあれこれ言い合う姿は本当に可愛らしく、大人二人はお酒をちびちび飲みながらのんびりと待った。
少しすると、戻ってくる二人。
にこにこしている光希とめちゃめちゃ嫌そうな顔の善逸。
「お待たせしました。では、歌います。
作詞作曲 如月光希・我妻善逸。『おしごとのうた』」