第20章 祝宴
光希は、善逸が脱いだ服をパタパタと畳んで重ねる。そのまま部屋の隅に置いた。
「善逸くん、光希ちゃん、ご飯の用意が出来たわよ」
千代が二人を呼びに来た。
「ね、母ちゃん見て見て。ぶかぶか」
「あらぁ、善逸くん可愛いわね」
「でしょ?」
二人は笑いながら義勇の部屋へ向かう。
善逸も長い袖を捲くりながらついていく。
「失礼します」
と義勇の部屋に入ると、お酒の用意もされていた。
「え……?」
「光希ちゃんの帰宅と、二人の婚約のお祝いですって」
驚く善逸に千代が声をかける。準備を手伝っていた光希は勿論知っていて、嬉しそうにしている。
「座れ」
「はい」
「失礼します」
千代もその場に留まる。
光希と善逸で、義勇と千代のぐい呑みに徳利から酒をつぐ。光希と善逸には小さなお猪口が置かれており、酒瓶から義勇がついでくれた。
「我妻、光希を任せた」
「はい」
それだけ言って義勇は酒を飲んだ。
「え、それだけ?俺には何かないんですか?」
「お前は……、我妻に迷惑をかけるな」
「えー……なんか納得いかないんですけど」
「光希ちゃん、お帰り」
「ありがと、母ちゃん」
「善逸くん、光希ちゃんをよろしくね」
「はい。……母ちゃん」
そう言って、三人も酒を飲んだ。
「美味しっ!」
「飲みすぎんなよ」
「我妻、酒飲んだことあるのか」
「俺たち、宿屋で育ったから。子どもの頃から何かと飲まされたりしてました」
「善逸はすぐ寝ちゃいます」
「お前の飲みグセの悪さもなかなかだけどな」
話しながら光希は義勇のぐい呑みに酒を半分くらいつぐ。
「明日、仕事ですよね。そこそこにしますか」
「見回りだから問題ない」
「あります。千代さん、これ」
酒瓶を千代に渡す光希。
「おい」
「とりあえず、です」
義勇の酒を取り上げといて、徳利からちゃっかり自分と善逸のお猪口につぐ。
「おい」
「だって、ほら、俺たちのお猪口ちっさいもん!」
「お前らは子どもだからだ」
義勇が光希の酒を取り上げる。
そんなやりとりをみて、こいつここで楽しくやってんだな、と善逸は思った。