第20章 祝宴
「とりあえず、ここに居て」
客間に善逸を押し込み、何処かへ行ってしまう光希。
……怒らせた?
不安になる善逸。
昨晩、駄目だというのを無理やり押し切って光希の部屋で爆睡し、しこたま怒られたことを思い出す。
自分の成長の無さに小さくなって部屋の隅に座る。昔から怒られてばっかりだな、としょんぼりする。
しばらく反省していると、客間の戸が空き、部屋着の光希が現れた。一応女の着物を着ている。
「善逸、今日泊まってくの?」
ごく普通に光希が話しかけてくる。怒ってる様子はない。
「あ、ああ。冨岡さんがそう言ってくれてる」
「そうか。これ着ろって」
光希が男物の着物を出す。
「義勇さんのだからでかいけど……大丈夫かな。一番短いのって言ってたけど」
隊服の上から善逸に被せてみたが、裾が床につき、手も半分くらい隠れてしまう。
「ちょ、何これ。物凄く可愛いんですけど。子どもみたい。ぷくくっ……」
「おい……」
「わかってるよ、義勇さんがでかすぎるんだよな。お前はチビじゃない。これから伸びるんだよな。くくくっ」
「俺よりチビに笑われたくねえ」
「さて、どうすっかな……、いっそ俺の着るか?善子ちゃん」
「嫌だ」
「でもここに子ども用の服はないんだよ、ぼく」
「子どもじゃねえよっ!」
「まあ、なんとかしてやるよ。あっち向いてるから着換えな。着物羽織ったら呼んで」
「おう」
善逸は隊服を脱いで、義勇の着物を羽織った。
「いいよ」
前合わせを手で止めている善逸。完全に裾が床に落ちている。光希は笑わないように裾をたくしあげ、腰紐で止めて着付けていく。
「……おい、顔、笑ってんぞ」
「え?バレてた?」
着付けるときはほとんど抱きつくような体勢になるので、善逸はいろいろと堪えるはめになったが、さっき拒まれた分、近くにいられるのは嬉しかった。
光希はおはしょりのようなものを作って着物を上に上げた。合わせをきれいにして帯も巻いてやる。
「よし、なんとかなっただろ」
「ありがとう」
善逸が嬉しそうに笑う。
「へへ、新婚みたいだ」
「……そうか?俺は、子どもを着付けてる感じだったぞ」
なんだよもー!と怒る善逸は、怒りながらも幸せそうな顔をしていた。