第19章 宣言
義勇は善逸を縁側に下ろす。
善逸の隣に腰掛け、ズボンの脚絆を外していく。
「え、ちょ、あの」
光希の「筋肉見せろ事件」を思い出して、なんとなく焦る善逸。そんな善逸を全く気にすることなく、義勇は無言で脚絆を取り去り、ズボンを膝の上まで捲り上げる。
そこへ「重っ」と言いながら、水の入った桶を光希が運んできた。
「善逸。足」
「え、ああ」
善逸は桶に足を浸す。
水が冷たくて気持ちいい。
「筋肉疲労だ。しばらく冷やせ」
「はい。ありがとうございます」
「ごめんな、善逸。霹靂一閃の連発はやっぱりきつかったな」
「いや。これが出来るようにならなきゃな」
光希は手ぬぐいを塗らし、水に浸かってない膝の辺りに置いて熱を持った関節を冷やす。
「約束通り家を貸してやる」
「義勇さん。ありがとうございます!」
「お前にじゃない。我妻に、だ。戦ったのはこいつだからな」
「ありがとうございます。冨岡さん」
「そうだ。あの、義勇さん。胡蝶さんのことは全部嘘ですからね。蝶屋敷に出入りしている男は、こいつと俺の同期二人だけだから安心してください」
「胡蝶と俺は何でもない」
「……善逸、どう思う」
「少し嘘の音がする」
「ですって、義勇さん」
「…………」
「家、本当に借りちゃっていいんですか?」
「……嫌なら返せ」
「嫌じゃないですよ。でも……」
「ずっと使ってなかった家だ。使う予定もない。誰かに住んでもらったほうが、いい」
「じゃ、遠慮なく」
光希はそう言って手桶を持って井戸へ走っていく。義勇が小さく息を吐く。
「冨岡さん、すみません。光希がずけずけと……」
「…………」
「家、ありがとうございます」
「……約束だからな」
「認めてもらえたって思っていいのでしょうか」
「好きにしろ」
「……では、好きにします。俺、音でわかるんで」
光希は縁側に戻ってきて、桶に水を足す。冷たい水が入ってきて心地良い。
光希は井戸水を入れた水筒を、義勇と善逸の隣に置いた。
「善逸をお願いしていいですか?俺、千代さんの手伝いしてきます。今日はご馳走でしょ?」
ニコッと笑う光希。
足を拭く為の乾いた手ぬぐいを二枚ほど善逸のそばに置き、ぺこりと頭を下げて走っていった。