第19章 宣言
速いっ!!
光希も義勇もその速さに目を見開く。巻き起こる風で裏庭に置かれていたものが吹き飛んだ。
殆ど残像でしか見えないが、善逸は神速で義勇を狙いにいっている。
義勇が腕を下ろす。
『凪だ!!善逸、踏ん張れ、捕まるな、後ろまで走り抜けろ!』
届いているかわからないが、呟く。
ザッという音とともに、義勇の後ろに一瞬黄色い姿が見えた。既に納刀の体勢をとっており、後ろ足に力を込めて「霹靂一閃!!」と切り替えして背後からもう一度狙う。
取った!!
光希は思わず立ち上がる。
義勇の背中に霹靂一閃が炸裂する、はずだったが、流石の水柱。身体を反転させて、左腕で善逸の木刀を受けた。
パシィン……という音が響いた。
背中には当てられなかったが、一本。
善逸は霹靂一閃の連発の反動でその場に倒れた。
「善逸っ!」
すぐさま光希が駆け寄る。
「はぁ、はぁ、いっててて……」
「おい、大丈夫か」
「やべ、しばらく立てないかもこれ」
「よし、一本だ」
義勇が自分の左腕を見ながら言った。
「ありがとうございました」
善逸が声だけで応え、座れない善逸の代わりに光希が隣で正座して頭を下げる。
「光希、途中からはお前の指示だろう」
「え?は、はは……」
「こいつは耳がいいらしいからな」
「なんで、それを……」
「こいつが自分で言った」
「おまっ馬鹿か!なんで言うんだよっ!隠しときゃいろいろ使えるのに」
「お前に言われたかねぇ!!」
「光希、深めの桶に水を張れ」
「はい」
光希はどこかへ走っていく。
義勇は善逸に近づくと、ヒョイと肩に背負った。
「うわっ!」
「我妻、よく戦った。見事な技だった」
「ありがとうございます。俺一人では無理でしたが」
「……お前の婚約者は、曲者だな」
―――…認めてくれた…のかな
言葉の少ない義勇からもらえたそれらの言葉を、素直に嬉しいと思った。