第19章 宣言
「我妻」
「はい」
「俺から一本取ったら家を貸してやろう」
「は?」
「え?」
唐突すぎる提案に、善逸と光希は二人同時に間抜けな声をあげる。
「家……?」
「俺の別宅だ。ずっと使ってない、空き家になっているものがある」
「義勇さん!その家はどこにあるのですか?」
「町外れだ。ここと蝶屋敷の間くらいの場所にあるから使いやすいだろう。光希の外泊も許可する」
二人は息をのむ。欲しい。欲しすぎる。
そして、同時に光希は一つの確信を得る。
「欲しいか、我妻」
「欲しいです!」
「なら、俺から一本とってみろ」
家は欲しい……が、義勇から一本は無理だろう。
でも、やるしかない!
「冨岡さん、お願いします!」
善逸は木刀を構える。
雷の呼吸、壱の型しか使えない善逸は、相手に向けて刀を構える事は滅多にない。居合い切りである壱の型は、納刀状態から始まるからだ。
正座をして稽古を見ている光希の両手に力が入る。
「来い」
義勇も刀を構える。
足に力を込めて、俊足を活かして切りかかっていく善逸。力はさほど強くないが、斬撃としての威力はかなり強い。
想像以上だった善逸の一太刀目に、義勇の本気もくすぐられる。
「流石、雷は速いな」
「えっ、なんで俺の呼吸、知ってるんですか?」
「あ、悪い。俺がだいぶ前に言った。幼馴染が雷ですって」
「えええええ!なんだよまじかよ!なにしてくれてんのもう!!」
どうやら善逸は呼吸を隠して戦いたかったようだ。
不意打ちで壱の型を放つ作戦は無に消えた。
「くそ……」
雷の俊足技は、絶対に警戒されている。
次の策を考えながら、何度も切りかかっていく。しかし、いくら善逸が速いといっても義勇がさばけないほどではない。
甘めに放たれた胴払いを刀でとめて、義勇は善逸を蹴り飛ばした。
壁にあたって跳ね返る善逸。