第19章 宣言
「冨岡さん。ありがとうございます。千代さんとお話をさせていただいて」
善逸はずびっと鼻水をすすりながら、頭を下げる。
「義勇さん。俺から義勇さんにちゃんと報告してないのですが、報告いりますか?」
「必要ない。我妻から聞いている」
「見舞いに来ていただいた時ですね」
「そうだ」
「じゃ、まいっか」
「体調は」
「問題ありません」
「三日目か」
「はい」
「鴉」
「今のところなしです」
業務連絡の言葉の少なさに驚く善逸。
「我妻は」
この流れで急に振られても「は?」としか答えられない。
「善逸、明日仕事?」
「い、いや、まだ何も指令来てないけど」
「だ、そうです」
通訳してくれる光希。
「なら、来い。我妻」
「え、どこへ」
「稽古つけてやる」
「えっ……」
突然の申し出にビビりたおす善逸。
義勇は立ち上がって部屋を出ていく。
「無理無理無理!柱との稽古なんて、死んでしまう。あわわわ、怖い怖すぎる!」
「大丈夫だ、俺が生きてるのが何よりの証拠だ。義勇さん、部屋着だからそんなに酷いことにはならないだろうけど…まあ半殺しまでは覚悟しろ」
「ひぃぃぃぃ!」
光希と善逸も稽古場に向かう。
稽古場に入ると光希は頬を染めて、満面の笑みで喜んだ。
「わー!久しぶり!うひょー!
義勇さん義勇さん、俺も!俺にも稽古つけてくださいっ!!!」
義勇に駆け寄って、袖を掴む光希。
その行動に、むっとする善逸。
善逸の気持ちに気付いたのか、わざと光希の頭に手を置く義勇。
「駄目だ。まだ激しい鍛錬はするな」
「ぐっ……、じゃあ明日!明日ならいいですかっ?」
「明日は仕事だ。たぶんな」
「くそー!!」
善逸は気付いていた。
義勇は二人の婚約を「そうか」や「確かに聞いた」とは言ったが、「いいぞ」などの許可する言葉を言っていないのだ。
光希は義勇の継子ではないし、本来なら許可など要らないのだが、善逸は少し気になっていた。
……俺は、まだ、認められてない
渡された木刀をぎゅっと握る。