第19章 宣言
義勇も光希に言われてハッとした。
……ほらな、聞いてなかったんだろ
光希は苦笑いをする。
「……よく来た。我妻」
「は、あ。はい」
「………」
「………」
沈黙。
再び助け舟を出港させようかと思ったが、善逸が「俺の戦いだ」といった事を思い出し、光希は少し待つことにした。
義勇が善逸を見つめる中、善逸が口を開く。
「本日はお呼びいただきまして、ありがとうございます。俺もしっかりとお話したかったので、その機会を与えていただだ、……いただき、感謝します」
善逸はふぅと一つ呼吸を吐いて続ける。
「それで。あの、前にも言いましたが、」
「待て」
「へ?」
「来た。待て」
意を決してして善逸が話し始めたのに、容赦なく会話の足元をぶった切ってくる義勇。嘘だろ、と驚く善逸。しかも言葉が少なくて何が来たのか何を待つのかさっぱりわからない。
光希も驚きながら、ごめんこういう人なんだと善逸に心で謝る。
謝りながら『前にも言いましたが』という善逸の言葉を読み解いていた。
そこへ「失礼します」と戸が開く。
千代がお茶を運んできた。
光希は立ち上がって、千代を手伝う。
お茶を配り終えた後、退室しようとする千代を義勇が止めた。光希にもその意味がわからず、千代と二人で首を傾げる。
――『宣言するなら、あいつの母親にしろ』
義勇の言葉を覚えていた善逸だけが、その行動をいち早く理解した。
光希は善逸の隣に、千代は障子の前に座る。
義勇は善逸を見つめ、善逸は緊張しながら千代を見ている。
「俺は、もう聞いている」
義勇は善逸にそれだけ言った。
それらの状況を見て、光希も遅れて理解をした。
まさか報告相手が千代だったとは。
うすうす気付いてはいたが、光希の知らないところで、既に義勇には話していたらしい。
……こればっかりは、善逸に頑張ってもらうしかないな
光希は、すっと善逸の後ろに下がって座り直す。婚約者として、女として、男を立てる行動をした。
両手を床につき、千代に向かって頭を下げる。
そして心の中で、さあ、いけ、善逸!と後ろからせめてもの応援をする。