第19章 宣言
その後も沢山の人が光希に寄ってきた。その度に足を止め、住人に丁寧に対応する光希。
「お前、完全に男ってなってんのな」
「なんか、そうなっちゃったんだよ。男と名乗ったことは一度もないんだけどな」
声を潜めて話す。
性別はともかく、ここで光希が愛されていることがわかって善逸も嬉しかった。
冨岡邸が見えてきた。
善逸に緊張が走る。おそらく善逸は、屋敷で義勇に詮議かなにかされるのだろう。
呼吸が乱れ始めた。
「善逸、行けるか。大丈夫か」
「う、うん」
「俺、状況がよくわかんないからなんかあってもお前を手助けできねえぞ。作戦会議しとくか?」
「……いや、大丈夫だ。これは俺の戦いだから」
「何の戦いなんだよ。全く……」
「…………」
「どうなっても知らないぞ」
「ああ」
そう言って、屋敷の門をくぐる。
「ただいま戻りました」
光希の第一声は、それだった。
なんと言って帰ればいいのかと思っていたが、自然と口から出たのが、それだった。
「光希ちゃん!お帰りなさい!」
女性が玄関に駆け込んできて、光希を抱きしめる。目に涙を浮かべている。
「ずっと、待ってたのよ!」
「母ちゃん!ただいま!心配かけてごめんなさい」
荷物を片手に持ったまま、光希も千代を抱きしめ返した。
「初めまして。我妻善逸と申します」
善逸は千代に向かって挨拶をした。
「初めまして。千代と申します」
善逸に気付いた千代も頭を下げる。
「さ、二人ともあがって。冨岡さんがお待ちよ」
「はい」
「お邪魔いたします」
二人は屋敷にあがり、廊下を歩く。
光希の後ろを歩く善逸は、吐きそうなくらいに緊張している。
……おい、こいつ本当に大丈夫かよ
光希は冷や汗をかく。
ちらっと振り返ると、目を血走らせてなんかブツブツ言っている。
我が恋人ながらちょっとキモい、と思う。
しかし、おそらく光希の為に頑張ろうとしてくれているので、それを見守ろうと思った。