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雷鳴に耳を傾けて【鬼滅の刃】我妻善逸

第18章 新たな関係性


隊服に着換え終わった善逸は、裏庭に出た。

池のほとりに座って鯉を見る。
生き物が好きな光希は、よくここに座っていた。

「鯉と恋って、同じ発音だな……」

ぼんやりと池を見ながらそう呟くと、後ろからぶはっと吹き出す声が聞こえた。


「……何笑ってんだ」
「いや、これはどう考えても大爆笑の案件だろ」

不覚にも考え事をしていて光希の音に気付かなかった善逸は、顔を赤くして口を尖らせる。


「確かに。ぷくく、同じ、発音、だなっ。……ふはっ、くくっ……恋て…恥ずっ……」

なかなか笑いが止まらない光希。
目に涙がたまっている。


「おい……笑いすぎだ」
「ごめんごめん。似合わなすぎて。
はー……、いやあ、笑った笑った。最高だよ、善くん」
「善くんやめろっ」

光希は目尻に溜まった涙を指で拭う。


「あ、ねえ。ほら、あそこのおでこ赤い子、炭治郎みたいだから俺のお気に入りなんだ」

善逸の隣に座って、池を指差しながら笑う光希。

「でな、あの大っきい奴が暴れん坊だから伊之助で、あのちっこいのがビビりだから善逸」
「おい。何で俺が一番お気に入りじゃねぇんだ」
「炭治郎が一番こっちに寄ってきて可愛いんだよ。善逸はすぐ逃げちゃうんだ。泳ぐのめっちゃ速い」

光希は池を覗き込んで鯉たちに話しかける。

「炭治郎、元気でな。伊之助、善逸をいじめんなよ。善逸、伊之助に負けんなよ。強くなれ」

応えるように伊之助がパシャンと水飛沫をあげた。


「俺が居なくなったら、この鯉たちを見てればいいんじゃない?恋と鯉は一緒なんだろ?」

「お前は、この池の中に居ないのかよ」
「俺……?俺は……、ここには、居ないな」

光希は池を見ながら寂しそうに言った。


「じゃあ見ても仕方ねぇじゃん。俺の恋はお前がいないと成立しない」
「なになに、お前どうした。今日は柄じゃないこと言い過ぎだぞ。熱でもあんのか」

「朝から説教されたからかな」
「それはお前が悪いんだろ」
「はい、すみませんでした」


善逸は池を見る。自分の名がついた鯉が葉っぱの下に隠れている。

……この善逸より、俺のほうが幸せだな。光希に会えるんだから。例えそれがたまにだとしても。


善逸はそう思った。


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