第3章 藤の花の家で
四人の骨折はだいぶ良くなった。
それぞれ鍛錬も始めて、失った体力を戻しながら療養をしていた。
ある日の昼下り、光希が炭治郎に声をかけた。
「なぁ、炭治郎。ちょっと鍛錬に付き合ってくれないか?」
その声に少し緊張を感じ取る善逸。
「ん?いいぞ」
炭治郎は笑顔で承諾する。
「技の練習がしたいんだ。だからここじゃちょっとな。近所の山でもいいか」
「ああ、構わない。直ぐ行くか?」
「そうだな。今から行けば夕方には帰ってこれるな」
「よし、行こう」
「……悪いな」
二人は一緒に屋敷を出ていった。
「……で。何でお前も来るんだよ」
後ろからついてくる善逸に光希が声をかける。
「別にいいだろ。邪魔はしねぇよ。どっちかが大怪我したら俺が運んでやるよ」
「別に大怪我するような鍛錬はしねぇよ」
「いやいや、誰かさんはすぐに無茶するからなぁ」
先程の光希の様子が気になって善逸は付いてきた。気付いたら「俺も行く」と追いかけていて、自分でも驚いた。
三人は山の少し拓けた所に出た。
「お。ここ良さそう」
そう言って、光希は水筒を下ろす。炭治郎も同じ場所に自分の水筒を置く。善逸は近くの岩に腰掛けた。
「炭治郎。とりあえず、俺の技見てくれ」
光希は抜刀して構える。
「全集中!水の呼吸、弐ノ型、水車!」
光希は技を出す。
善逸は、綺麗な技だな、としか思わなかった。しかし、炭治郎は目を丸くしている。
「……え?」
「…な?」
善逸は二人の様子に首を傾げる。炭治郎が何に驚いてるのか、わからない。
「光希の水車…回転が逆だ……!」
それを聞いて、初めて驚く善逸だった。