第18章 新たな関係性
「……で、ですね。一つ相談なのですが」
光希が、おずおずと切り出す。
「相談?なに?」
「それ……」
光希は枕元に置かれた紙を指差す。
善逸は光希を膝に乗せたまま、手を伸ばして紙を取る。
見てもいいの?と言うように光希に目を向ける。光希は無言で頷く。
それは義勇からの帰宅を促す手紙で、明日戻るようにという指示と、もう一つ。
帰宅の際、可能なら我妻善逸を連れてこい、と書かれていた。
「俺……も?」
「うん……。何でだろ。どうする?」
今日任務をこなしてきた善逸は、緊急指令でもこない限り明日は休みである。しかし、わざわざ柱の家になんて行きたくないだろう。
「呼ばれる理由もわからずに行くのは嫌だよね。理由くらい書いて欲しいわ、全く……。善逸、疲れてるし、無理しなくていいからね。うまく言っとくから」
光希は気を遣ってそう言った。
しかし、善逸は少し考えて「いや、明日俺も一緒に行く」と行った。
「え、無理しなくていいよ」
「行く」
「……大丈夫なの?」
「行きたい。冨岡さんの家」
善逸は、何故呼ばれたかがわかっていた。
間違いなく婚約のことだろう。
「光希の母ちゃんにも会いたいし」
ちょっと怖いけど、という言葉は心の中で呟いた。
「……心当たりがあるの?」
「え?」
「呼ばれた理由」
「………」
「あるんだね」
善逸は何も言わない。
「……ごめん。男同士の話だから」
「わかった。聞かないよ」
このやり取りで、なんとなく光希も何故善逸が呼ばれたのかがわかった。
でも、善逸が何をどこまで義勇に話しているのか、何故義勇に話したのか、そこまではわからない。しかし、善逸の判断に文句をつけるつもりもなかったので全て任せることにした。
「とにかく、明日は俺も一緒に行くから」
「うん」
「少しでも一緒にいたいし……」
「うん、そうだね」
「本当にそう思ってる?」
「思ってるよ」
「鬱陶しいって思ってない?」
「思ってないよ。今のところ」
「……今のところ、ね」
善逸は、初めて告白した時のことを思い出して苦笑いする。
「鬱陶しくないならさ……」
「ん?」
「今夜、ここで寝てもいい……?」
善逸が、少しかすれた切ない声でそう言った。