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雷鳴に耳を傾けて【鬼滅の刃】我妻善逸

第17章 友が起きるまで 3


善逸は光希を膝から下ろして、光希の髪を触る。

「この長さも見納めなのかな」
「そうだね。今日切るよ」
「切った髪、どうすんの?綺麗な髪だから捨てるの勿体ない」
「別に、勿体なくないよ。髪なんてこれからいくらでも伸びるじゃん。生きてさえいれば。
切った髪は、持っていきたいところがあるの」

「どこ?」
「父様と母様のところ」
「そっか。持ってく時、俺も一緒に行くから。ご挨拶にな」
「うん」


「……じゃあ、また今くらいまで伸びた時に、今度は俺に一房頂戴。その時は、お前の名字が変わってるかもだけどな」

「……いいけど」
「約束な」
「私、髪伸びるの速いよ」
「へえ、ならいろいろと急がないとな」


善逸は光希の髪を手に取り、口付けをした。



「行ってくる」

そう言ってベッドから立ち上がると、善逸は赤く染まった頬を隠すように光希に背けた。


「行ってらっしゃい。ご武運を」

いつの間にか逞しくなった善逸の背に向けて、ベッドの上で光希は丁寧に礼をとる。


善逸はそのまま部屋を出ていった。




光希はころんと横になる。

善逸が触れた髪を、自分でも触る。


「あまり切らない方がいいのかな……そしたら早く………」

頬が熱をもつ。


「………なんてね」

一人で言って一人で笑った。



夜、光希は窓辺で髪を下の方でぎゅっと縛る。
縛った髪を持ち上げて、迷うことなく結び目のすぐ上を小刀でざくりと切った。
半分ほどの長さになった綺麗な黒髪が、背中にさらりと音を立てて落ちる。


右手には長い髪の束。
少しその束を見つめて、机の上に置いた。



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