第17章 友が起きるまで 3
食欲がなく、お昼を食べないで寝転がっていた。そこへ、「入るぞ」と声がかかる。
「ちゃんと食えよ。ただでさえお前は食う量が少ないのに」
「ん、夜は頑張るよ」
「ああ、そうしろ。痛みは?」
「今は落ち着いてる」
「そっか」
「仕事の準備は出来たの?」
「うん」
善逸はベッドに座り、壊れ物を扱うように優しく光希を抱きあげ、自分の膝の上に座らせた。
そのまま光希をそっと抱きしめる。
「あとは、これだけ」
善逸の匂いがする。
安心する匂いに包まれて、光希はそっと目を閉じた。
「しばらくこうしてていい?」
「いいよ」
「身体、辛くなったら言って」
「うん」
そう言うと、善逸は光希の身体をぐっと引き寄せて自分に密着させた。
光希も善逸の胸にすり寄る。
そのまま、静かに時が流れた。
善逸が小さな声で呟く。
「俺が帰ってくるまで、ここに居てくれる?」
不安の混じった声だった。
「うん。ちゃんとここで待ってるよ」
「……本当?」
「本当だよ」
善逸は安心したように息を吐く。
「絶対だからな」
「うん。だから善逸も絶対、帰ってきてよ」
「わかった」
善逸は光希に口付けをした。
出発前で気が立っているのか、彼にしては少々荒々しい口付けだった。頭の後ろを押さえられ、何度も口を吸われる。
口が離れた、と思ったら、ぎゅっと抱きしめられる。少し荒い善逸の息が、光希の肩口にかかる。
「俺がこの任務から帰ってきたら、お前は……」
「善逸。まずは、無事に帰ってきて。話しはそのときね」
「……うん」
善逸の抱きしめる力が、強くなる。
抱き合っているので顔はわからない。
光希は善逸の背中に手を回し、背中を優しく撫でる。
「大丈夫。私は、私の心は絶対に善逸から離れていかない。ずっと、一緒にいるよ」
「光希……」
「心配しないで。ね?」
「……うん。ありがと」
光希を抱きしめる善逸の手が少し緩んだ。
「じゃあ、ちゃんと帰って来られるように、兄ちゃん頑張ってくるわ」
善逸は笑いながらそう言った。
「うん。兄ちゃん、頑張ってきて」
光希も笑いながら善逸の背中をぽんぽんと叩く。