第17章 友が起きるまで 3
その瞬間、目の前の鬼の首が飛んだ。
義勇が鬼を切ったとわかる。
鬼は三体に分裂していたようで、義勇は二体を倒し、三体目を今、光希の目の前で倒した。
義勇は息一つ切らさずに、刀をしまった。
鬼の気配が消えた。
「もう大丈夫だ」
義勇の声がする。
ふぅ、と息を吐き、光希も刀を鞘にしまう。
「皆さん、お怪我はありませんか?」
鬼の返り血をぐいっと拭きながら、光希が聞いた。皆、ガタガタと震えていたが、何度も頷いている。
「えと、そこのお兄さんとお姉さん、足と腕、怪我してますね。見せてください」
光希は優しく声をかけ、二人の怪我に軟膏を塗って包帯を巻いていく。
怖かったですよね、もう大丈夫ですよ、と皆に落ち着かせる言葉をかけていく。手当をしながら、さり気なく全員に目を向けて状態を確認していった。
「鬼から受けた傷は治りが悪いことがあります。こちらの薬を差し上げますので、しばらく塗って様子をみてください」
しのぶ特製の薬をそれぞれに渡す。
女性の方は頬を赤らめて光希を見ている。
震えていた他の人たちも、光希の立ち居振る舞いをみて安心したような顔を浮かべた。
「にーちゃん」
子どもが光希の腕を引く。
「ん?なんだ?」
「助けてくれて、ありがと」
「ははっ。鬼……悪いやつをやっつけたのは、俺のお師匠様だよ。俺は師匠が切ってくれるまで頑張ってただけ」
光希は立ち上がる。
「義勇さん、皆さんを街まで送ります」
「ああ」
数人の男が死体の身元確認をしたいと言って、残ることになり、義勇と共に殺害現場に向かう。
光希はそれ以外の者と山を下りる。
きい坊と呼ばれた子どもは光希に懐き、手を繋いで一緒に歩いた。
無事に街まで送り届けると、早足で山に戻る。
途中で寝たきい坊が起きてしまうと泣くだろうということと、頬を赤らめた娘さんから一刻も早く離れなければ、という思いで山へかけ戻る。
山に戻ると義勇は男たちと検証を終えたところだった。街の役人と共に明日、埋葬などの事後処理をするそうだ。
男たちは見送りは大丈夫だというので、挨拶をして別れた。
「お疲れ様でした」
「お前もな」
終わった……と思うとどっと疲れがでた。