第17章 友が起きるまで 3
「んあっ?」
光希は目を覚ました。
「起きたか」
「ひぇぇ、めちゃめちゃ寝てましたね、俺。すみません!」
「一刻程だ、気にするな」
「いや、起こしてくださいよ……」
膝の上ではまだ鴉たちが寝ている。
「まだ夕暮れ前だ。寝てていい」
「いえ、もう大丈夫です。体力だいぶ回復しました。ありがとうございます」
「そうか」
「義勇さん、夜まで休まれますか?」
「必要ない」
二人が話していると光希の鴉が起きた。
寛三郎はまだ夢の中だ。
「どう思う」
義勇が聞く。
「死骸の位置が、山のわりと入口付近、中程に二箇所、さらに奥に一箇所。警戒心の強さから、同じところでは食べないのだと思われます」
光希は地面に枝で絵を描きながら考えていく。山の絵に、死骸のあった場所に☓を付ける。
「……今日はまた別の場所か」
「おそらく」
光希は地面を見たまま話す。
「殺された人たちの服ですが、粗末なものではなかった。街からさらっているとするならば、大きな街はこっち方向にあります。昨夜食事をとってないことから、あまり奥まで行かずに、空腹に耐えかねて、今夜は山の入口付近で食べようとするのではないでしょうか。一度ここで食べているので……」
光希の推理に驚嘆する義勇。
そうだ、こいつはそういう奴だった、と思い出す。
「この辺りか」
義勇も枝を持って、○印を付ける。
「はい。おそらく、ですが」
☓がついてるのと街の方角も確かに合っている。
可能性は高い。
「ですが、的を絞りすぎると外した時に大変なことになります。ここは二人別々に動くのが得策かと」
「俺がここにつくとして……お前はどこに行くつもりだ」
「山の頂上です」
「なぜだ」
「頂上なら全方向見える。登るより下るほうが圧倒的に早い。予想と違う場所に鬼が現れても、気配を感じたらすぐに駆けつけられる。幸か不幸かこの山は傾斜がきつい。一秒でも早く鬼を見つけて人質を守るとなると、ここが良いのではないかと」
「なる程」
「で、義勇さんと反対側の位置に俺の鴉に居てもらいます。もし鬼がそっちからきたら知らせてもらい、その時は俺が山を駆け下りて向います。……どうでしょうか」
「いいだろう」
義勇は腕組みをしながら頷く。
最善の策だろう。