第16章 友が起きるまで 2
出発時間の一刻程前。
……善逸を起こしに行くか
寝てるだろうから悪いなと思うが、黙って出発するわけにも行かない。
部屋から出ようとしたら、ちょうど善逸が顔を出した。
「お。今、起こしに行こうと思ってたんだ。おはよう、善逸」
「え、お前…その格好……」
「ああ、任務だ」
「まじ、かよ」
「まあ入れよ」
光希の部屋に善逸を入れる。
戸惑ったような顔をする善逸。二人は立ったまま話す。
「いつ行くの?」
「もうすぐ」
「単独?」
「合同。義勇さんと」
「冨岡さんと……」
いろいろと複雑な気分になる善逸。
「柱との合同任務は、長期になることもある。帰りはいつになるか、正直わからない」
「………」
「で、前も言ったけど、今回の任務が終わったら俺は義勇さんの所に戻ることになると思う。しっかり話してないから確定じゃないけど」
「………」
「でも、隠れ家のことは忘れてないから。絶対に実現しような」
「……うん」
「とりあえず、義勇さんのところに戻るにしても、隠れ家を作ることも、任務で生き残らなきゃ何も果たせない」
「うん」
「だから、まあ、とにかく頑張ってくる」
光希はふわりと笑った。
そんな光希を善逸はぎゅっと抱きしめる。
ほとんど喋らない善逸。
光希は善逸の気持ちが痛いほどにわかった。この前、自分が善逸を送り出したときのあの不安な気持ちなのだろう。
光希は善逸の背中をぽんぽんと背中を叩く。
「ちゃんと帰ってくる。俺の帰る場所は、お前のところだから」
「うん」
「待ってくれるか?」
「……もちろん。でも、早く帰ってきて。じゃないと衰弱死するかも俺」
「ははは。頑張って帰ってきてもお前が死んでたら嫌だわ。ちゃんと生きとけ」
「………うん」
「お前もまた指令が来るだろうから、頑張れよ」
「……嫌だなぁ」
「しっかりな」
「……うん」
光希は善逸の胸を押して、身体を離す。
そのまま背伸びをして善逸に口付けをした。光希から口付けをするのは珍しい。初めての時以来かもしれない。
柔らかな笑顔を見せる光希。
「行ってきます」
「……絶対に帰ってきて。待ってるから」
「はい。必ず」
光希は部屋から出ていった。