第16章 友が起きるまで 2
翌朝、任務を終えた善逸が帰ってきた。
「善逸!おかえり!よかった!」
玄関に光希が走り込んできた。
「ただいま。眠い」
「ああ。風呂入って寝ろ。お疲れ様」
労うように、ぽんぽんと肩を叩かれる。
「……へへっ」
善逸が頬を染めて嬉しそうに笑う。
「?」
「いや…、帰ったときにお前が出迎えてくれるのっていいなって思って」
「そう思うなら毎回ちゃんと帰って来くれな」
「おう」
善逸は部屋に戻る。寝るのだろう。
光希も自室に帰り、準備をする。
先程、光希にも指令が来た。出発は今日の夕方。
義勇との合同任務だ。
復帰一発目が義勇と一緒なのはありがたいが、柱との任務となると敵が恐ろしく強い。長期任務となる可能性もある。体力的にもかなりきついだろう。
正直、本調子でない今、足をひっぱってしまうのではないかと不安しかない。
しかし、やるしかない。
しのぶに傷薬なども沢山もらい、可能な限りの準備をした。
伊之助にも説明をして、今日の鍛錬は無しとした。
光希は気持ちを落ち着かせるために、炭治郎の顔を見に行った。
「炭治郎ー。入るよー」
返事がないことはわかっているが、一応声をかける。
部屋に入り、ベッドのそばの椅子に座る。
「今日から任務が始まるんだ」
「……久し振りだからな。緊張する」
「義勇さんとだぞ。絶対ヤバイ鬼くるよね。大丈夫かな、俺。ふぅ……
逆転の呼吸使うのも二ヶ月振りなんだぜ。一発目から強敵って、鬼殺隊もどうかしてるよな。慣らしとかさ、するよね、普通」
「光希なら大丈夫だって、言ってくれよ。珍しく弱ってんだからよ」
「………じゃあ、約束な」
「俺、絶対戻ってくるから。その時、ちゃんと起きてろよ。お前は夢から戻ってくるんだ。絶対だからな」
「返事がないのは、了承したととらえる。文句ないよな」
「じゃあな、行ってくるわ」
光希は立ち上がり、炭治郎の頭を撫でる。
顔色はだいぶ良い。
「もう少しで起きそうなんだけどな……」
小さく笑って、炭治郎の部屋を後にした。