第16章 友が起きるまで 2
指令が来た。
また、死と隣り合わせの日々が始まる。
大丈夫、死なねぇよ
落ち着かせる為に言ったが、光希だって内心穏やかではない。
たとえ相手が弱くても、油断したら死ぬ。死ななくても腕の一本や二本すぐに飛ぶ。仕事をする中で、隣で呆気なく死んでいく隊士を何人も見てきた。
自分が死ぬなら平気なのに、善逸が死ぬのは嫌だ。そう思ってしまう。
光希は黙々と掃除をした。
いつもより念入りに、隅々まで雑巾をかけ、祈るように頭を下げて稽古場を後にした。
部屋に戻っても善逸は居なかった。
仕事の準備をしているのだろう。
光希も自分の事をやろうと、庭で素振りを始める。
そのまま会話をすることなく、夜になった。
「ぐあ……」
風呂上がりの光希はベッドに倒れ込んだ。
素振りをしすぎて、両腕と背中が悲鳴を上げている。風呂で解してきたが、めちゃめちゃ痛い。
「あ、背中、包帯……」
のそりと起き上がる。かなり背中を使ったので、出血するかもしれない。入浴時、外した包帯に血がついていた。まだ傷口表面が完治していない。
病衣を脱ぎ、だるい腕で包帯を巻いていく。
そこへ「光希、居るか?」と声がかかる。今かよ、と苦笑いする。
「居るけど待って」
「??」
「着替え中」
「……むしろ入りたい」
「子どもには刺激が強すぎる」
「子どもじゃねーよ!」
そう言つつ待ってくれる善逸。
包帯を巻き終わり、病衣を着る。
「いいよ」
声をかけると善逸が入ってくる。
包帯を棚に戻す。
「包帯巻いてたのか」
「うん」
「背中だから巻きづらいだろ」
「まあね」
「俺がやってあげたのに」
「いや……無理っしょ。絶対変な気起こすよ」
「う……、そ、そんなことないよ。見ないようにすれば、出来る。たぶん」
光希はふふっと笑いながらベッドに座る。
「準備、出来た?」
「うん」
「刀、手入れしたか?」
「ばっちりだ」
「手拭い、血止め薬、持ったか?」
「怪我する前提かよ。しのぶさんから貰った。ちゃんと準備してある」
「よし、あとは気合だな」
「それを今、貰いにきたんだ」
善逸は光希の隣に座って、ぎゅっと抱きしめた。