第16章 友が起きるまで 2
光希と善逸が稽古場の掃除をしていると、チュン太郎が飛んできた。
「ひぎゃぁぁぁぁ!!」
突如稽古場にこだまする善逸の汚い叫び声。手には手紙を持っている。
「な、なんだ、どしたっ?」
びっくりして掃除の手を止める光希。
善逸は手紙を持ったままガタガタと震えている。
「し、ししし、しし……」
「ししし?おい、落ち着けよ」
「指令が、……来た」
善逸の肩の上で、チュン太郎が気合を入れるように胸を張る。
「指令か。単独?合同?」
「……単独みたい」
「そうか。いつだ?」
「………明日」
「じゃあ、掃除はもういいよ、あとは俺がやる。任務の準備してきな」
光希は善逸の側に置かれた雑巾を拾う。
すると善逸が、がばちょっと抱きついてきた。
「ぎゃああああああ!嫌だあ!!嫌だ嫌だ嫌だ!死ぬぅ!俺死ぬよ?ねえ!ねえ!」
「ちょ、おい、離れろ!落ち着けよっ!大丈夫だ、死なねえよっ!」
「うわああああん!怖いよー!嫌だあー!!こんなに幸せなのに死ぬよ俺!!嫌すぎるよお!!!」
「耳元で叫ぶなっ!俺の耳が死ぬわ今すぐ!落ち着つけって、大丈夫だって!」
久しぶりの任務だからか、盛大に拒否反応を示す善逸。チュン太郎も心配そうに、ピョコピョコと周りを飛び跳ねる。しかし、光希がよしよし、と背中を擦ってやると、多少落ち着いたようだ。
「大丈夫だ、お前は強いから。さっきだって俺と伊之助が二人でかかってったのに捕まえられなかった」
「うぇぇ……ひっく、…ぐすっ」
「単独っつーことは、そんなにヤバイやつが相手じゃない。今のお前なら大丈夫だ。伊之助と二人で堕姫の首切ったんだぞ、お前」
「………うん」
「よし、準備してこい。勝つためには準備は大事だ。考え得る最高の用意をしろ」
「わかった」
善逸は立ち上がって稽古場を出ていった。
「チュン!」
「チュン太郎、伝達、お疲れ様だったな」
ありがとう、と言うように光希の手に乗るチュン太郎。光希もどういたしまして、とチュン太郎に頬ずりする。
「本当に可愛いな、チュン太郎」
「チュン!」
「いつも善逸がごめんな。見放さずにいてくれてありがとう。善逸が死なないように、見張ってくれな。頼むぞ」
「チュン!」
チュン太郎は嬉しそうに飛んでいった。