第16章 友が起きるまで 2
翌日、善逸が訓練場にいくと、光希と伊之助が手合わせをしていた。
素手で戦っている。
本調子じゃない者同士、互角の勝負をしている。多少光希が優勢といった感じだ。
速さは光希。伊之助の攻撃を先読みし、躱しながら隙を狙う。
力では伊之助。昨日起きたばかりでなんでそんなに鋭い攻撃が出来るのだと感心する程だ。
手合わせをする二人は真剣そのものだ。だけど、凄く楽しそうにみえる。
光希は疲れの見え始めた伊之助の蹴りを潜り、懐に飛び込んで腹に肘打ちを入れた。伊之助はゲホッっとむせる。
速い!でも浅い!
見ていた善逸がそう思うと、それを承知であるかのように光希が追い打ちをかける。
よろめいた伊之助の首に腕をかけて「やあっ!」と力をこめて投げ倒す。そこにまた飛び込んで振り上げた足を、ダアンッと音を立てて下ろす。もちろん、顔のすぐ横に、だ。
「へへへっ、はぁ、はぁ、俺の勝ち」
ニコッと笑って伊之助の隣に座る。
伊之助は起き上がって叫ぶ。
「だーっ、くそー!油断した!!もう一本だ!!」
「いいぞ!あ、でもちょっと休憩しようぜ。伊之助起きたばっかだもんな。水飲め、水」
強い……
善逸は光希の強さを改めて見て、ゾッとした。この先夫婦になったら夫婦喧嘩は熾烈を極めるだろう。
「善逸もやるか?」
「いや、俺は……」
「来いよ!紋壱!」
「もはや一文字もあってねえよ!誰なの、それ!」
「よし!ニ対一の鬼ごっこしようぜ」
光希が楽しそうに提案した。
「ニ対一?」
「善逸、逃げろ。この中でお前が一番速い。伊之助、俺と一緒に捕まえるぞ」
「すぐ捕まえちまうだろ」
「そしたら鬼交代。どう?善逸」
「いいぜ。逃げ切ってやるわい!」
「この砂時計が落ちるまでな。いいか?」
「よし来い!」
「おお!」
「開始!」