第16章 友が起きるまで 2
善逸の反応に、あははと笑う光希。
「善逸の名義で借りようか。女の名で借りると空き巣に入られそう。家賃は半分出すから」
「うん」
「小さな家でいいや。近くに銭湯があればお風呂もいらないね」
「うん!ふふふ」
嬉しそうに笑う善逸に、光希もくすっと笑う。
わかりやすく機嫌が治った。
「でも、本当に……いいのかな?」
「いいんじゃない。隊士が家を持っちゃ駄目なんて聞いたことないし」
「そうじゃなくて……」
「?」
「婚約、保留にされてるのに……」
善逸がおそるおそる聞いてくる。
「あ、そっち?」
「うん……」
「そうねぇ……」
うーん、と考え込む光希。
「まあ、いいんじゃない?婚約者(保留中)でも。とりあえず善逸の家に恋人が押しかける形だから」
「保留は消してもらえないんだ……」
「あはは!でも……いつか、私を我妻光希にしてね」
そう言うと、善逸は満面の笑みで「もちろんだ!」と言った。
「お家の名前、何がいいかな……」
「名前?そんなの要るか?」
「あった方が呼びやすいでしょ」
「名前……かぁ」
「うーん………あっ!」
「なに?」
「子どもの頃、作ったじゃん!裏の林の中に」
「ああ、「隠れ家!!」」
二人の声が重なった。
新たに借りる家は「隠れ家」という呼び名になった。この名前になってわくわくが止まらない二人は、やはりまだまだ子どもなのだろう。
「場所は蝶屋敷と義勇さん家の間にしよう」
「いいのか?」
「当然でしょ。どっちからも行きやすいことが大事。今度、探しに行こう」
ご飯を食べ終わって、食器を返しに行く。
そのまま光希はアオイと食器を洗い始める。善逸は自分の部屋に戻った。
戻ると伊之助が同じ部屋にいた。
「伊之助、こっちに移動したんだな」
「おう。炭五郎がまだ寝てるからな」
「身体はどうだ」
「もう完全復活だぜ!」
「はは、嘘付けよ」
「明日から、修行に付き合え、紋逸!」
「善逸だよ!いいけどよ、光希もお前とやりたがってたから相手してやってくれ」
「おう!」
機嫌が良くなった善逸は、ようやく起きた友との語らいを楽しんだ。