第15章 友が起きるまで
「何言ってんだ、お前……鍛錬の許可、」
「出たんだよ」
「そうはいっても、」
「刀は駄目だって。だから、全身訓練やろうぜ」
「おいかけっこか……うーん…」
「反射の方がいいか?」
「そうじゃなくて、大丈夫かってことだよ」
「大丈夫大丈夫」
「痛くなったらすぐやめるぞ」
「おう」
二人は距離をとる。
「ん?どっちが逃げるんだ?」
「あ。善逸、どっちがいい?」
「……じゃあ、追う方で」
「よし、じゃあ俺が逃げる方な。いいか?」
「いつでもいいぜ」
「開始!」
光希が叫ぶと走り込んでくる善逸。光希も走って逃げる。
「うわ、足が動かねぇっ!ひええっ!」
焦る光希。体力が物凄く落ちている。
善逸が後ろから捕まえようと手を伸ばす。
「どうした光希、捕まえるぞ!」
「うわっ!!」
光希は身体を反転して手を躱し、逆方向に走り出す。
「危ねえっ!ふぅ……」
「くそっ」
……考えろ考えろ。体力も速さも善逸が上だ
善逸がまた走ってくる。速さを上げてきた。咄嗟に飛び上がって善逸の背に手を付き回転し、背後に着地してそのまま走り去る。
また追いかけてくるが、捕まる直前で床を滑り横からすり抜けてまた走り去る。
「こんの、ちょこまかと……」
「はぁ、はぁ……負けてたまるかっ」
この数手でもう息が上がる。
「はぁはぁ、きっつ……ふぅ…よし!」
光希の考えはまとまった。
善逸がまた走ってくる。伸ばした手をよく見て、ふっと横に、躱す。そして、今度は逃げない。
善逸が疑問を浮かべながらまた手を伸ばす。それをギリギリで避けて、また逃げずにその場で留まる。
「お前これ、反射訓練になってるぞ……」
そう。光希は逃げることをやめ、体力を使わず、手を躱すことに集中することにしたのだ。
善逸の脅威は足の速さと瞬発力だ。へたに距離をとると助走をつけられてやっかいだ。近距離ならいけると判断した。
「はぁ、はぁ、まあ良いじゃん。組み手、みたいな、もんだな」
善逸が捕まえようとにじりよる。
何度も手を伸ばすが、ひらりひらりと躱されて捕まえられない。