第3章 藤の花の家で
男子たちのいる部屋のお向いが光希の使う部屋だった。彼らがいる部屋の半分くらいの大きさである。
「……ってぇ」
左手を押さえて布団の上に座る。利き手を負傷したことは正直キツイ。また、元の様に刀を振れるだろうか。剣士として戦っていけるのだろうか。不安が募る。
―――――ただでさえ、俺の剣は……
「……ふぅ………寝よ」
光希は、布団の中で丸まって眠った。
一方、男子部屋では。
炭治郎と善逸が、布団の中で話していた。
「変わった子だな、光希は。口調は確かに男だけど、女の子なんだよな。不思議な感じがする」
「ただの変な奴さ。意地っ張りで負けず嫌いで、子どもの頃から人前で絶対に泣かない」
「そうなのか」
「ああ。それぞれ別々の育手の所にいってからは俺も知らないけどな」
「……強いんだな、光希は」
「いや…強くはねぇよ。…あいつ、寝てる時はよく泣くんだ。本人も気付いてないんだろうけど」
「そっか……、いろいろあるんだろうな」
「そうだな……」
「今日、泣いてないといいな……」
「……そうだな」
そう言って善逸は目を閉じた。
炭治郎はすぐに寝ついたようで、穏やかな寝息が規則的に聞こえる。
光希の様子も聞こうと思えば聞けるが、敢えて聞かないようにする。
もし泣いていたとしても、何もしてやれないから。
子どものときみたいに、そっと抱きしめてやることはもう出来ない。
善逸は布団を頭から被って、光希と同じように丸まって眠る。