第3章 藤の花の家で
禰豆子が炭治郎の妹だと解ると、善逸の機嫌はとたんに良くなった。
にこにこへらへらしながら禰豆子に近付く善逸。
「禰豆子ちゃぁ〜ん。こっちおいでぇ」
目尻を下げながら、両手を広げて禰豆子を呼ぶ善逸。しかし禰豆子は光希の上から動かない。
「はは、やだってよ」
禰豆子の頭を撫でながら「そりゃそうだよなー禰豆子」と笑いかける光希。
「なんっでだよっ!!ちょ、おまっ、その手離せ!!馴れ馴れしいんだよっ!!」
「おい善逸、夜中なんだぞ静かにしろよ」
「そうだそうだ。モテない男が騒ぐな」
「むきーー!!!」
炭治郎は光希を向いて、
「光希、ずっと抱っこしててくれてありがとな。身体痛いだろ。禰豆子貰うよ」と言った。
禰豆子は光希を見上げる。
「いや、別に痛くはないけど…。禰豆子、兄ちゃんのとこ行くか?」
光希がそう聞くと、禰豆子は炭治郎と光希を交互に見て頷いた。
「ほら」
炭治郎が手を広げると禰豆子は光希の膝から降りて、炭治郎の胸へ飛びついた。
「良かったなぁ、禰豆子。光希に抱っこしてもらえて」と、炭治郎も嬉しそうに禰豆子を撫でる。
そんな炭治郎と禰豆子を、光希も微笑みながら見つめる。
「本当に可愛いな、禰豆子」
「……ありがとう」
「この子を、人間に戻すんだよな」
「ああ。俺は出来ると信じてる」
「俺も、信じるよ。人間に戻った禰豆子を抱っこする。いつか」
「光希、ありがとう」
――――…おい、なんだこの空気は。ほんわかしすぎだろ?そして俺のこのすごい疎外感なに。ねえ。なんなのよ。滅茶苦茶一人ぼっちじゃん俺。かわいそうじゃね??
善逸は三人の醸し出す暖かな空気を、寂しい瞳で見つめていた。
「……さて、俺はもう寝るよ。遅くまで部屋に居てごめんな」
そう言って光希は立ち上がった。しばらく禰豆子を足に乗せていたから軽く痺れてる。
「いや、俺たちは構わないが……」
「……早く出てけこの女たらし」
「こら、善逸」
そんな二人のやり取りを見ながら、ははっと笑って「じゃ、おやすみ」と光希は部屋を出て行った。