第15章 友が起きるまで
「……いいなぁ、ちくしょう」
悔しさを滲ませながら、光希はしばらく男子二人の筋肉鑑賞をしていた。
点滴が繋がれている腕筋を見て、ズボンを膝まで捲くり上げてふくらはぎを見る。
足の筋肉なんて、なかなか見れないので興味深かった。寝てるのをいいことにじろじろと身体を見る光希。まるで痴女だ。
「ふくらはぎ、どうやったらこんなに太くなるんだよ。男子、凄いな」
興味と感心が止まらない。
太ももが見たい。そう思ったが、流石にそれは無理だと諦める。スボンを剥ぎ取るわけにはいかない。
そして、前の戦いを思い出す。善逸は頓珍漢な格好のまま戦っていたので、飛び上がった際に太ももが見えていた。
自分も必死だったので、あまり覚えていないが、かなり太く、鍛えられていた気がする。
「まあ、あいつも、男だもんな」
そう呟いて、二人の布団を戻す。
「伊之助、炭治郎。じろじろ観察してごめんな。でも、起きないお前らが悪い。文句があるなら今すぐ起きろ。早く起きないと、こんな腕になっちゃうぞ」
そう言って、自分の腕を捲くって見せる。
その細さに自分で言って自分で凹む。
光希は部屋に帰らずに、裏庭に出た。
日を浴びながら、ゆっくり歩く。
池のほとりにある岩に座る。泳いでいる鯉を見る。
鯉は元気に池の中を泳ぎ回り、水音を立てて水紋を広げている。
光希は目を閉じた。
太陽の暖かさを感じ、風を感じ、池の中の命を感じる。
焦るな、焦るな、とまた言い聞かせる。
呼吸に集中をして、回復力を高める。
生きている事に感謝しろ。
生きているから努力できる。
今、出来ることをやれ、しっかりと。
しばらく瞑想していると、善逸の気配がした。
光希の様子に気が付いたのか、声をかけずに離れたところで止まる。
鯉がバシャンと飛沫をあげたこともあって、目を開ける。
「善逸、お疲れ様」
光希が声をかけると、「おう」と返事が帰ってくる。
「部屋戻んないと。身体痛くなるぞ」
「うん。戻るよ」
よいしょ、と立ち上がる。
善逸が近寄る。