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雷鳴に耳を傾けて【鬼滅の刃】我妻善逸

第14章 両親


雷の音が聞こえて、光希はぎゅっと目を閉じる。耳も塞ぎたいが、手は母の腰に回しているので塞げない。

「光希。雷は、怖くないよ」

光希は母の腕の中、否定するようにふるふるっと首を横に振る。

「雷はね、とても美しい。そして、すっごく強いの。空から落ちる、闇夜に光る一本の槍よ」

「やみよの……やり」
「そう。母さんは、雷……好きよ」

そこへゴロゴロッと大きな音。目が眩みそうな光。ドォンという大きな音がした。

「ひっ…!」
「大丈夫、大丈夫」

震える光希にふわりと羽織が被せられる。

「今の、ちょっと近かったな」
「そうね」

父が母に笑いかける。

「父様……父様も雷好きなの?」
「ああ。だって格好いいだろ」
「格好いい?」
「雷は速いんだ。高速で狙いすました一撃を放つ。わくわくしないか」

光希は恐る恐る外を見る。

少し遠くから聞こえる雷鳴。
それに呼応するかのように暗い夜空に稲光が走る。



その瞬間、胸がドクンと音をたてた。

――え、なに?


まるで自分が雷に打たれかと錯覚するほどの衝撃。外から目が離せなくなる。
また響く雷鳴。光希の耳が音を捉える。そして闇夜を切り裂く大きな大きな稲光。


母の腰に回した手が汗ばむ。
身体中が心臓になったようにドクンドクンと力強く脈打つ。血が駆け足で巡っている。

父と母を見ると、二人とも微笑みを浮かべて外を見ている。

「父様……母様……」


「光希……側にいてあげられなくてごめんね」
「母様?」
「寂しい思いをさせて悪かった」
「……父様」

二人は外を見たまま話す。


「忘れないで。私たちはいつも貴女を想っている。一緒にいるから」
「やだ、母様…行かないで……」

「思い出してくれてありがとう」
「父様っ…やだやだ……一人にしないで」

外からまた雷鳴が聞こえる。
光希の目から涙が溢れる。


「一人じゃないでしょ」
「ほら、雷の音がする」

「かみなり……」


ドオンという音と、今までで一番強い光が光希を包む。


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