第13章 遊郭
炭治郎が気が付くと、禰豆子が「うーー」と心配そうな顔で覗いている。
「え……俺はなんで動けるんだ?なんで生きてるんだ?他の皆は……」
混乱している炭治郎。
禰豆子が「うー……」と言い、目線を追うとすぐ横に光希がうつ伏せで倒れていた。
紺色の着物なのでよくわからないが、背中から血を流している。傷は深いようで、元々白い顔がより白くなっている。
「光希!光希、しっかりしろ!」
返事がない。
「さっき……俺を庇ったから…か…?おいっ!目を開けろっ!光希っ、死なないでくれ!」
炭治郎が悲痛な声で呼びかけると、光希はうっすら目を開ける。
「光希っ!」
「……生きて、る…よ。みん、なは…」
光希は身体中が痛く、口を動かすのがやっとだ。正直、自分でも助かったという感じはしない。今にも死にそうな気がする。
「きっと大丈夫だ。今から俺が見てくる。ここにいろ」
そう言って立ち上がる炭治郎も、膝からガクンと崩れ、禰豆子に背負われる有り様だった。そんな姿にいつもの光希なら笑うだろうが、その声はなかった。
光希は目を開けているのも辛く、そっと目を閉じて耳をすます。
「たんじろー……」
「善逸!無事か!良かった!」
その声を聞いて、光希はホッとする。
―――良かった。生きてた。あとは伊之助と宇髄さん……生きててくれ…どうか…どうか……
意識が遠のいていく。
―――寒い……寒いなぁ…血を出しすぎたか……
薄れていく意識の中でぼんやり浮かぶ優しい顔。
―――……誰、だ? 父ちゃん…母…ちゃん…?
それは、全然知らない顔なような、でもすごくよく知ってる顔のような気がした。
たまらない程懐かしくて、凄く凄く会いたかった気がして、手をピクッと動かす。
じり…じり…と力なく手を伸ばす。閉じていた目をうっすらと開け、連れて行ってくれ、と無意識に思った。目から涙がこぼれた。
「光希!!」
突然、その手を掴まれた。
温かい手をだった。力強く握る。
「しっかりしろ!死ぬな!!俺を残して死ぬな!!」
顔を見なくても声でわかる。
―――…んだよ、ちくしょう。せっかく父ちゃんと母ちゃんが迎えに来てくれたのによ…