第13章 遊郭
――ちくしょう……かなり遠くまで飛ばされた。早く戻んないと
受け身で着地をしたが、蹴り飛ばされた腹が猛烈に痛い。ぐぅっと蹲るが、ギリッと奥歯を食いしばる。
「こんなの、全然痛くないっての!」
ざっと立ち上がって走る。ヤセ我慢は光希の得意技だ。
善逸や伊之助も気になるところだが、まずは上弦と戦っている炭治郎だろう。
下手したら数手で死にかねない。
光希は痛みを堪えて、真っ直ぐに炭治郎の元へ向かう。
「ぜぇっ……はぁっ…炭治郎!どこだっ!」
探し回るが返事がない。
背中がヒヤリと震える。最悪の予想を振り払うように頭を振って、目凝らす。
……居たっ!
炭治郎は屋根の上で気絶していた。
屋根に飛び乗り生きてることを確認し「炭治郎!しっかりしろ!」と頬を叩きながら声をかける。
炭治郎は倒れてるのに、建物の下から爆音がする。
「!!」
下を覗き込んで、光希は目を見開く。
そのまま炭治郎を抱えて屋根から飛び降り、彼を地面に置き、すぐさま走り出す。
「禰豆子っ!!やめろっ!」
禰豆子は鬼化していた。
炭治郎を守ろうとして、戦っていた禰豆子。
沢山の血を流し、怒りで我を見失っている。
人に襲いかかった所を光希がぎりぎりで横から体当りして止めた。二人で転がる。
起き上がるとそのまま人に飛びかかろうとする禰豆子を後ろからがっしり掴む。が、力の弱い光希では抑えきれない。
「禰豆子、落ち着けっ!いい子だから!」
必死で、止めようとするが、禰豆子は光希を振り払って再び人に襲いかかる。
「禰豆子!!!」
力では止められない。それでも光希は手を伸ばす。この子に人を襲わせるわけにはいかない。絶対に駄目だ!
光希は襲われそうになる女性を庇うように前に出た。食うなら、俺を食えと言わんばかりに。