第3章 藤の花の家で
殆どおかずがなくなった光希のお膳を見て、伊之助が言う。
「お前、ちっせえんだからもっと食えよ。そんなんじゃでかくならねぇぞ」
「いや、俺はもう大きくならねぇよ」
光希は伊之助を見て笑いながら言う。
「俺は十六だ。もうこの先背は伸びない。女だからな」
光希がそう付け加えたので、三人はハッとした。そうだった、こいつ女だった、と。
ちょいちょい忘れてしまうくらいそれを感じさせない光希ではあるが、食事量や身体の小ささで、自分たちとの違いを感じた少年達。
「だから、君たちは俺の分まで食べなさい。成長期の男子諸君」
にっ、と笑う光希。
片手だからか、結ばれてない髪の毛がさらっと動く。
「少なくしてってお婆さんに言わなきゃな」と言いながら食べ始める光希。片手で器用に食べている。
善逸は、光希のそんな姿に、見慣れた幼馴染でなはない何かを感じ、少しだけ胸がうずいた気がした。
「皆で食べるご飯は、美味しいな」
「そうだな」
炭治郎とそう笑い合って話す光希。
何だか幸せそうだ。
善逸は特盛になった自分のご飯を食べ始めた。
残してたまるか、と思いながら。