第12章 逢瀬
注意⚠ブラックな内容です。
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十歳を少し過ぎた頃、若旦那が泊まりでどこかに出掛けたとき、夜に離れに大旦那が来ることがあった。
光希と善逸はいつも同じ部屋で布団を並べて寝ていたが、大旦那が来ると光希は別室へ連れて行かれた。
耳をすますと大旦那の荒い息遣いが聞こえる。
光希の声は全く聞こえないが、深い悲しみと苦痛の音がしていた。
一刻ほどすると大旦那は母屋に帰っていき、光希も部屋に戻ってくる。
表情はなく無言で布団に入る光希。不穏な音を奏でる光希を、善逸はいつも心配していた。
光希が別室で何をされていたのか善逸にはわからなかった。
でも様子からして楽しいことではないのだとはわかっていた。だから、怒られてたのだと思っていた。
そういう日は光希の布団に潜り込み、彼女を抱きしめていた善逸。抱きしめていないと光希がどこかへいってしまいそうな気がしたからだ。
光希は泣きもせず、ぼんやりしていたが、布団の中で抱きついてくる善逸を、払いのけることもしなかった。
翌朝になるといつも通りの光希に戻っているので、善逸はこの出来事を深く考えていなかった。
そんなことが、大旦那が亡くなる十一歳の春頃まで続いた。
―――……そうか。あの時の『アレ』は、そういうことだったのか。
善逸の中でいろいろなことが繋がった。