第12章 逢瀬
「善逸がああなるのは、わかる」
ポツリと話し始めた光希。いきなり先程の己の醜態を指摘されてバツの悪い善逸。
「……ごめん」
「違う。責めてるんじゃないんだ。お前は男だからあたりまえだ。しょうがない」
「………ご理解、ありがとう」
「俺も、お前とそういう関係になることが、嫌な訳じゃないんだ」
「……! そ、そうなのか?」
「問題は、そこじゃなくて……」
「……なくて?」
「俺は……」
そこで言葉を切る光希。
善逸に抱きしめられながら、黄色い羽織を両手で握りしめている。
手は小刻みに震え、口に出すことを躊躇している。不安が音に色濃く出ている。
「大丈夫だよ、言ってごらん。俺は全部受け止めるから。どんなことでも」
善逸も優しく光希を抱きしめる。
なんとなく、この先に言うであろう言葉がわかった善逸。己も覚悟を決める。
「俺は、……キレイな身体じゃ、ない…」
やっぱりそうか。
悪い予感が的中し、ぐっと息が詰まるが、辛いのはこの子だ、と取乱さないように呼吸を整える。
「……そうか。よしよし。辛いことなのに教えてくれてありがとな」
そう言って背中をさすると、光希は泣き始めた。善逸も心中穏やかではなかったが、光希を宥めることを最優先させた。
「ごめん。ごめんね、善逸。早くっ、言わなきゃって思ってたんだけど、言えなくて……
絶対嫌われるって思ったから……」
「ん?驚いたけど……ショックもあるけど…嫌いにはならないよ」
「………」
「本当だよ」
「………ほんと?」
「もちろんだよ」
善逸は光希をぎゅっと抱きしめる。
「なぁ……光希、…聞いてもいいか…?」
「……なに?」
「………相手は、誰だ?」
聞いてどうする、光希に辛いことを思い出させるだけだ、そう思ったが、善逸は聞かずに済ませられなかった。
「………ごめん、辛いよな。やっぱり、」
「大旦那」
「え?」
「……宿の、大旦那さん」
それを聞いて善逸ははっとした。
そして思い出した。