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雷鳴に耳を傾けて【鬼滅の刃】我妻善逸

第12章 逢瀬


うどんを食べ終わってまた街を歩く。

なんかさっきから善逸の様子がおかしい。
まあ、光希にも理由がわからなくもない。二人になれる場所……か。

「善逸。少し街の外れの方まで歩こうか。お散歩しよ」

二人になれる場所を探そうという含みを汲みとり、「うん」と口元をほころばせる善逸。

てくてくと歩いて行く。
たが、さびれた場所になればなる程、林の中は逆に混雑していた。

なるほどね……
光希は考える。そして。

「よし、街を出よう」と言った。

帰るの?と焦りを滲ませる善逸。光希は笑って違う違う、と目線を送る。
街を出てから林に入ると、人はあまりいなかった。


「ね?静かでしょ」

にこっと笑う光希。

だが、人が全く居ない訳ではない。
光希はキョロキョロと周りを見渡す。しっかりとした大木を見つけると、するするっと登っていく。

建物の二階部分くらいに生えた大きな枝に腰掛けると、下にいる善逸に向かって手招きする。善逸も木に登る。


「流石、我が軍師」
「ははは、頭がいいのだよ、私は」

二人で笑い合う。
刀を近くの枝に引っ掛けて落ちないように置く。

枝に座ったまま木の幹に持たれた善逸が、両手を広げる。光希はそっと身体を寄せる。


「やっと……二人になれた」

善逸が光希の身体をぎゅっと抱きしめる。
光希も善逸の背中に手を回す。

しばらく二人は抱きしめ合っていたが、善逸が光希の身体をすっと離し、顔を寄せる。

「……いい?」
「駄目…っていったら?」
「んー、強行突破」

くすっと笑いながら、善逸が唇を寄せてきた。光希も目を閉じて受け入れる。
まだ少しの緊張はあるものの、慣れてきたこともあって、リラックスして口付けをかわす二人。

こんな不安定な場所でリラックスできるのは、彼らの日々の鍛錬で培われた常人離れした体幹があってこそだろう。


唇が離れると、ふっと笑う光希。

「善逸、紅付いてる」

光希は懐紙で善逸の口をそっと拭いてやる。自分の紅も拭いて落とす。

「女の子みたい」

そういって笑うと、善逸の目がギラリと光った。


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