第12章 逢瀬
「わぁっ!」
光希は目を輝かせて喜ぶが、善逸は見たことないものばかりだ。
「何だ、これ……」
「んとね、これがあいすくりーむ、こっちがぱんけぇき、だよ。この蜂蜜をかけるの」
「で、この黒い飲み物が、」
「珈琲。さぁ善逸くんは飲めるかなー?」
光希は笑いながら一口飲む。
善逸も一口飲み、ケホッとむせる。
「苦え」
「大人の味だよ」
美味しそうに珈琲を飲む光希を悔しそうに見つめる善逸。
「あいす食べてごらんよ。溶けちゃうから」
言われてアイスを口に運ぶ善逸。一口食べるや否や、驚いた顔をしてアイスを見つめる。
「なんだこれ……うまっ!」
「でしょ?でしょ?絶対善逸好きだと思ったんだ!」
顔をキラキラさせる善逸の目の前に、ナイフで一口サイズに切られたパンケーキが運ばれる。蜂蜜とバターが甘く香る。
「ぱんけぇきもご賞味あれ〜。はい、あーん」
善逸は食べさせてもらうことに抵抗を感じたが、人目を気にしながら口を開け、パクリと食べた。
「えっ、うんまっ!」
「でしょー?」
善逸の反応に大満足の光希。
「甘露寺さんと来たときにね、あーこれ絶対善逸好きだよなー、食べさせてあげたいなーって思ったの。来れて良かった!」
そう言って、自分もパンケーキを食べ「ん、美味しっ!」と幸せそうな顔をする。
善逸は嬉しさと愛しさと幸福感で、なんだか泣きそうな気持ちに、なってきた。
「ほら、もっと食べてね。ぱんけぇき切ってあげるから」
「うん。ありがと、光希」
涙をぐっとこらえて珈琲を飲む。またゲホッとむせる。光希が笑う。
目尻に浮かぶ涙を、珈琲の苦さのせいにして誤魔化した。
光希はラムネを頼んでくれた。
「ね、炭治郎たち元気?善逸の話も聞かせてよ」
善逸の珈琲を飲みながら、光希が聞く。
飲み物をラムネに代えた善逸が、炭治郎や伊之助の話をする。光希はそれを楽しそうに聞いていた。
時間が経つのはあっという間で、お昼の時間となり、店が混んできた。
「出よっか」
二人は喫茶店を出た。