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雷鳴に耳を傾けて【鬼滅の刃】我妻善逸

第80章 輝く未来


二月八日。
義勇の誕生日に、善逸たちは冨岡邸に来ていた。

「お互い、約束を果たしたという事だな」
「まあ、とりあえずは、といったところですね。二十五歳到達おめでとうございます」
「お前も、生還してなによりだ」
「楽勝ですよ」
「嘘つけっ!この馬鹿!死にかけてたくせに」

義勇は痣で死ぬ歳を超えた。

「義勇さんも実弥さんも、痣が出たのはあの一晩のみ。命の前借りが少なかったのかもしれません」
「ふむ。ならお前もそうだな」
「私の場合は痣以外にもいろいろありますが」
「俺も平均寿命よりはだいぶ短くなるだろうがな」
「そうですね。私からの約束は、善治が五つになるまで義勇さんが生存することですよ」
「それに関しては了承していない。俺がしたのは、あかりが五つになるまでは生きててやるというものだ」

「ちょっと!不吉な話しないでよ!」

光希と義勇の会話を聞きながら、善治を抱く善逸が叫ぶ。

「今日はお誕生日なんだよ?」
「そうだったね、ごめんごめん」
「もうっ!」

この手の話をすると、善逸はいつも怒る。不安なんだろうな、と思う。

「ほら、あかり。義勇さんに渡すんだろ?」

善逸があかりに声をかけると、モジモジしながらあかりが義勇に近寄った。

「あのね、ぎゆしゃん」
「なんだ」
「おめでとうごじゃいます」

あかりが後ろに回していた手を前に出す。
小さな手には、折り紙で折られたお花が握られていた。先のあかりの誕生日に不死川がくれた綺麗な千代紙で作られている。この千代紙をあかりがとても大切にしていたことを義勇も知っていた。それを使って作ってくれたのだ。

角もきっちりと合っていない、不格好な花。所々折り間違いの線が入っていて、よれている。

それでも。

「あかり、ありがとう」

義勇は嬉しかった。
折り紙と彼女の頑張りを、大きな左手で受け取る。
かつての彼からは全く想像出来ない笑顔を浮かべてあかりを見ると、彼女もぱぁっと笑顔になった。

「いいよ!」

「あかり。『ありがとう』に対してのお返しの言葉はなんだった?」
「あ!……えっと…およろこびいただけて、なによりでごじゃいます」
「え?!『どういたしまして』じゃねぇのかよ!」
「あはは、よくできました。偉いね」
「えへへ」

相変わらずな光希達を見ながら義勇は微笑んだ。
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