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雷鳴に耳を傾けて【鬼滅の刃】我妻善逸

第80章 輝く未来


「少し寝ろ、光希。もう大丈夫だよな。ちゃんと戻ってこられるだろ」
「ああ、だるい……。ん?そもそもなんで俺は寝てたんだ?………え?」

まだ脳みそが起ききっていない光希。目眩のする頭で状況を整理しようとしている。

「ははは、お前、さっきからずっと如月光希に戻ってんのな」
「え?」

善逸は笑いながら光希の前髪をさらりと撫でる。光希はぽかんとしている。

「善治郎たちに会ってたんだもんな。そりゃそうだわな。懐かしいな、この感じ」
「…………っ!」

途端に光希が状況を思い出す。身体を起こそうと力を入れる。

「っ!ぐぅ……いった…!お腹、痛っ!!」
「こ、こらっ!動くな!!」

善逸は慌てて光希の身体を抑えた。

「善逸!赤ちゃん!!赤ちゃんは?!」
「落ちつけ!!動くなって!!」
「ねえ!無事なの?私、産めた?!ぐぁ……、」

肘を付いて動こうとした光希は、ぐらりと揺れる視界にベッドに再び倒れ込む。腕の点滴も外れそうになって善逸は必死に止める。

「大丈夫!大丈夫だから!」
「……っ、はぁ、はぁ、……大丈夫?」
「うん、生きてるよ」
「はぁ、はぁ…本当……?」
「ああ。小さいけど、大丈夫だよ」

善逸は光希の身体を優しくポンポンと叩いて落ち着かせる。

「待ってろ、今連れてくる。せっかく寝てるから、そっとな」

善逸は立ち上がり、ベビーベッドから眠る善治を慎重に抱き上げた。
起こさないようにゆっくり歩いて光希に近づく。

「じゃーん、善治でーす」
「善治……」
「お前の言ってた通り、男の子だったよ」
「……………」

善逸は点滴の管に気をつけながら、そっと光希の隣に善治を寝かせた。
光希が震える手を伸ばして善治の頬に触れる。寝ながら善治はむぐむぐと口を動かして、にこりと笑う。自分に伸ばされた光希の指を、善治の手が反射的にきゅっと握った。

光希の目から涙が溢れる。
記憶が混濁しているが、ちゃんと生まれてくれていた。小さいながらにしっかりと呼吸をし、鼓動を刻んでくれていた。


「………ありがとう」

初めて善治を見たときに善逸が呟いた事と同じことを彼女も呟いた。

善逸の指が光希の涙を拭った。

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