第80章 輝く未来
「……鴉くんと、チュン太郎が来ててね」
ぽつりと光希が話し始めた。
善逸は光希の手を握ったまま聞く。
「迎えきたんだけど、どうする?って聞くんだ」
「……へぇ。なんて答えたの」
「疲れたから、もう行こっかなって」
「おい」
「ははは。嘘だよ。んー…、なんて答えたかよく覚えてない。でも、二人に会えたことが嬉しくて嬉しくて、俺はとにかく駆け寄って抱きしめたんだ」
「そうか」
「羽の感触とか匂いとかさ、夢にしちゃやけに現実感あって……懐かしくて……ずっとこのままこうしていたいって思ってたら、鴉くんが『鳥の役目は、人を起こすことだ』って言うんだ」
「朝鳥か」
「そう。『こっちに来る気がないならとっとと起きろ』って」
「それで一度ぼんやりと起きたのか」
「ん?俺、一度起きたの?」
「覚えてないの?」
「わかんない……。で、鴉くんが『俺が生きられなかった分をやるから』って言ってね」
「善治郎が生きられなかった分……」
「おかしいよね。鴉くんは俺を助けるために死んだのにさ。鴉くんの命はもう俺が貰って使っちゃってるはずだから、って言ったけど『ごちゃごちゃうるさい』って一蹴された」
「ははは。鴉に論理は通じねえだろ」
「そうだな……。で、目を開けたら善逸がいた」
「俺は、いつでもお前の側にいるから」
善逸は光希の唇に優しくそっと口付けた。
「チュン太郎、元気だった?」
「うん。善逸が大変だから起きてあげてって」
「喋ったの?」
「めっちゃ喋ってたよ」
「へぇ」
「チュン太郎は善逸のことばかり話してたな。凄い頑張ってたから褒めてあげてとか」
「おお、偉いぞチュン太郎」
「いい加減雀見て泣くのはやめろとか」
「そ、それは……もう少し待って」
「大人になったんだからもっとしっかりしろとか」
「…………、はい」
「いつも見てるってさ」
「……うん」
「不思議な夢だったな……」
善逸は感謝をした。
光希を起こしに来てくれた、小さな相棒たちに。話疲れたのか、ふぅ…と一息つく光希。
「夢じゃないよ。善治郎とチュン太郎は本当に来てたと思う。俺にも聞こえたから。羽音だけだけど」
「そっか。善逸の耳が聞いたんなら間違いないな」
「連れてかれちまうのかと焦った」
ふふ、と光希が笑う。まだ顔色は良くない。