第80章 輝く未来
とりあえず窓辺に連れて行く。
「今日はいい天気だなぁ」
病室の外の庭木に、数羽の雀が止まっていた。
「ほら、あれが雀さんだよ」
善逸は目を細める。
新生児がそんな遠くまで見えないなんてことを善逸は知らない。
寒さの中、チュンチュンと仲間同士鳴きあう雀たちを見ながら、去年空へと旅立った相棒を思い出す。
チュン太郎は善逸の手の中で眠るように息を引き取った。雀の寿命を考えれば当たり前のことだし、チュン太郎は長生きした方だと思うけれど、その時のことを思い出すと今でも泣けてしまう。
荒い呼吸の中「チュン太郎!」と呼びかけると、チュン太郎はうっすらと目を開き「……チュン」と最期に一声鳴いた。それはまるで「楽しかったね」と言っているようで、善逸はその小さな身体を抱きしめながら泣いた。
号泣する善逸の隣で光希も泣いていた。死というものがよくわからないあかりだけがキョトンとしていた。
チュン太郎は今、光希の相棒であった善治郎の隣で眠っている。善逸の羽織の端切れに包まれて……
善逸は雀たちを見ながら「雀のお宿」を小さく口ずさむ。歌が心地良いのか、ゆらゆらと揺すられる振動が心地良いのか、うとうとする善治。かふ…、と何度かあくびをすると善逸の腕の中で小さく寝息をたて始めた。
善逸は慎重にベッドに下ろす。
ふぎっ、と声を上げたのでビクッとしたが、善治はそのまますよすよと寝始めた。
ほー……っと一息つくと、善逸は布団に倒れ込んだ。
そのまま一気に睡魔に飲みこまれる。夢の中にチュン太郎が来て、励ましてくれた気がした。