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雷鳴に耳を傾けて【鬼滅の刃】我妻善逸

第80章 輝く未来


「お腹空いた?おしめ?」

善治を覗き込む。パタパタと短い手をばたつかせて泣いている。
善逸は手早くおしめを変えて、首を支えながらゆっくりと抱き上げる。

「……さっきの授乳からまだ二時間も経ってませんぜ、旦那。もう腹減ったの?母ちゃん枯れちまうぞ」

抱っこしながらゆっくりリズムよく揺らしてやると、善治は泣き止んで口をあむあむとさせながら善逸をじっと見た。

「あ、おっぱいじゃないのね。寂しかったのか?ごめんごめん」

善逸は自分が寝る用に敷いてある布団に胡座をかいて座り、善治を抱きかかえたまカラカラと音の鳴るおもちゃを眼の前で振ってやる。
善治は目を輝かせておもちゃを見ていた。

「お前……可愛いな、ほんと」

善逸が眉毛を下げてへにゃりと笑う。


しかし。

「あー、ねみぃ。一人じゃキツイって、光希さーん……」

彼の本音と弱音とあくびが出た。
助けを求めて呼びかけても、光希は起きない。


正直、何故生きていられるのかわからない

医者は善逸にそう言った。
それほど光希の状態は良くなかった。

それでも光希の身体は母乳を出す。
授乳時は、半身起こした光希の身体を後ろから善逸が支え、前側から善治を抱いて乳首を口に含ませて飲ませている。
本当なら瀕死の者に授乳などさせてはいけないのだろうが、光希がそれを望んでいる気がしたので善逸は光希の乳を与えている。

しかし、いつまでそれを続けられるのか。
それは誰にもわからない。

「………っ、はっ!いけね、寝てた」

うとうとしていた善逸は慌てて立ち上がり、善治をベッドに戻す。新生児を抱いたまま眠りこけるわけにはいかない。
しかし、下ろした瞬間ギャン泣きする善治。

「おんぎゃぁ!おんぎゃっ!おんぎゃぁぁー!!」
「おおう……、こりゃ参ったね」
「うんぎゃぁーー!!」
「まだまだ寝かさないよ、ってか?男に言われても嬉しくねえよ……」

善逸はまた善治を抱き上げてため息を付いた。
過酷なまでのワンオペ育児。善逸はとりあえず泣き止ませるために善治をあやしていく。

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