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雷鳴に耳を傾けて【鬼滅の刃】我妻善逸

第79章 命の呼吸


持ってきていたおにぎりを病院の廊下であかりと食べていると、医師と看護師が来た。

男性医師が告げたのは、陣痛は起きているが胎児がおりてこない、長期戦になるかもしれないということだった。
つまり、難産ということ。

善逸はずっと手術室内の音を聞いていたので、実はほとんど状況がわかっていた。医者が濁した部分もわかっている。状況はかなりよくない。

「出産まで時間がかかると思います。一度帰られますか?お子さんもいらっしゃいますし……」

看護師があかりを見ながら言う。

「出産が夜になるようなら、娘を友人宅に預けてきます。少し考えます」
「わかりました」

医師と看護師が忙しそうに去っていく。
黙っておにぎりを食べていたあかりが、口を開いた。

「あかり、たんちゃんとこいく」
「あかり……」
「お父しゃんはお母しゃんにがんばれっていうんだよ。できる?」

指についた米を舐めながら、大人みたいな口をきくあかりに思わず笑みが溢れる善逸。

「ははは、うん。出来るよ。任せてくれ」

善逸はあかりのほっぺたの米粒を取って自分の口に放り込み、濡らした手ぬぐいで彼女の手を拭いた。


善逸はあかりを背負って走り出す。
足が痛んだけれど、構わずに山道を駆けていく。
炭治郎の家が見えてくると、伊之助が出てきた。

「おお!善逸じゃねぇか!」
「伊之助!あけましておめでとう。皆いるか?」
「ああ。今日は仕事もないからのんびりしてるぜ」
「いのちゃん!」
「よお、あかり、元気にしてたか?」
「げんき!」

善逸は早足に家に入っていく。
出迎えた炭治郎たちに新年の挨拶をしてから状況を説明する。

「そうか、わかった。あかりのことは俺たちに任せて、善逸は光希とややのことを考えてくれ」
「ありがと。悪いな」
「気にするな。こっちは大丈夫だから」

「私の鴉貸してあげる」
「カナヲちゃん」
「何かあったらこの子に伝えて」
「ありがとね。また状況を連絡するよ」

善逸は立ち上がり、炭佑と遊んでいたあかりに声をかける。

「あかり、父さんは病院に戻るから」
「………うん」
「おいで」

泣きそうな顔になるあかりをギュッと抱きしめる。

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