第79章 命の呼吸
「父さんはね、あかりが大好きだよ」
「うん」
「父さんも、離れたくないよ。いつもずっと、あかりと一緒にいたいよ。あかりが笑った顔も、泣いた顔も、怒った顔も、寝顔も……全部、全部大好きなんだ。あかりは父さんと母さんの宝物なんだよ」
「……うん」
「だからね、あかりが俺たちと離れたくないのもわかるよ。俺もおんなじだから」
「うん」
「でもね、ここにいてもあかりは寂しい思いをするだけなんだ。忙しい大人たちがうろうろしてて、誰もあかりに声をかけてくれない。積み木も砂遊びも出来ない。静かにしてなきゃいけないし、絵本もないし、お歌もうたえない。父さんや母さんですら忙しくてあかりの側にいてやれないんだ」
「…………」
「あかりが悲しい思いをするのは、父さん嫌だなぁ」
「…………」
「炭治郎たちのところなら、皆遊んでくれるよ。たまにここへ連れてきてもらえば父さんや母さんとも会える」
「………うん」
あかりは善逸にきゅっと抱きつく。
「あかり、……じゃまなの?……いないほうが、いいの?」
小さな肩が震える。
「違うよ。違う。邪魔なんじゃない。そんなはずない」
「うぇぇぇん……」
「いいか、あかり、俺たちは家族だ。家族は協力して助け合うんだ。父さんと母さんはここで、あかりは炭治郎のところで頑張るんだ。大切な家族のために、寂しくても頑張るんだ」
「…………」
「俺と光希のために、頑張れるか、あかり」
「………はい」
「いい子だ」
善逸はあかりの頭を撫でる。
「母さんも、あかりと同じ年の時、炭治郎の家にいったことあるんだって」
「そうなの?」
「うん。母さんのお母さん……あかりにとってのおばあちゃんが体悪くしたときにね。お父さんやお母さんと離れて炭治郎たちと一緒にいたんだってさ」
「お母しゃんも、がんばったの?」
「そうだよ」
「お母しゃん、えらいね」
「そうだね」
あかりの目がキラリと光る。
彼女は光希に似て負けず嫌いだ。
「なら、あかりもがんばる」
「うん。あかりなら大丈夫だ」
炭治郎に預けることを納得させられたようで、善逸は少しホッとした。