第79章 命の呼吸
善逸は話を続ける。
「赤ちゃんが産まれたら、父さんは付きっ切りで赤ちゃんのお世話をしなきゃならないかもしれない」
おそらく小さく生まれてくるであろう赤子。その時、光希もどんな状態になっているかわからない。
入院が長くなる可能性がある。
「父さんも母さんも、しばらく病院から離れられないかもしれないんだ」
「あかりも?」
「……あかりは炭治郎の所に行こう」
「あかりだけ?」
「うん。あかりは炭治郎の所で皆と過ごしてくれ。禰豆子ちゃんも伊之助も、カナヲちゃんも炭佑もいるから楽しいぞ」
「なんで?あかり、お父しゃんとお母しゃんのところにいる」
「……それは出来ない。父さんも母さんもあかりと遊んであげられないんだ」
「やだ!やだやだやだ!なんであかりだけちがうの!」
「あかり、少しの間だけだから。な?」
「いやっ!あかりここにいる!」
「駄目っ!」
「あかり、ここにいる!いっしょにいる!……うぇぇぇん…お父しゃんのばかぁ……」
あかりはまた泣き出した。
善逸は困ってしまう。あかりの不安な気持ちもよくわかるので、あかりの背中を撫でながら言い聞かせる言葉を探す。
……光希ならどう説得するだろうか
善逸は考える。
「そうだよなぁ、あかり。俺や母さんと、離れたくないよなぁ」
「ひっく、ひっく、…………うん」
「俺たちは家族だもんな」
「うん」
あかりがぽろぽろと涙を流しながら、ぎゅっと善逸に抱きつく。
善逸は、光希がいつもやるように、まずは相手に共感してみた。あかりに寄り添い、まだ言語化出来ない彼女の想いを代弁する。
小さな身体をしっかりと抱きしめ返してやる。