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雷鳴に耳を傾けて【鬼滅の刃】我妻善逸

第79章 命の呼吸


善逸は正月休みで閉まっている病院の裏口から駆け込む。

「急患でお願いします!妻が産気付きました!」

善逸が叫ぶと看護師が慌てて走り寄ってきた。
「こちらへ!」と案内されるまま善逸は手術室に行き、光希をベッドに下ろす。


「ご主人はここまでです」

そう言われ、善逸は光希の手を握る。


「……光希、約束」
「うん」
「お母しゃん」
「あかり、お父さんの言うことをよく聞くんだよ」
「はい」

善逸は光希の手を離し、「妻と子をよろしくお願いします!」と頭を下げてあかりと共に部屋を出ていく。


善逸の眼の前で、手術室の分厚い扉が閉まった。



最期じゃない
これが最期じゃないよな、光希

また、俺に笑ってくれるよな
『善逸』って俺の名前呼んでくれるよな

きっとこの先、楽しい事いっぱいあんだよ

俺たちの家族が増えてさ
大変なことも増えるけど、絶対にめちゃめちゃ楽しい毎日になるんだよ


だから

頑張れ

頑張ってくれ

俺は祈ることしかできねえけど

絶対に諦めないから

頼む、頑張ってくれ……



善逸の耳には手術室内の音がしっかりと聞こえる。

「照明!」「胎児心拍注意!」「母体血圧低下!」「まだいきまないで!」「ここを掴んで、痛みを逃して!」

カチャカチャという金属音や、沢山の人の声が飛び交っている。
光希の声も聞こえるが、彼女は泣き叫んだりはしていない。聞こえるのは苦しそうなうめき声と「ありがとうございます」などの御礼の言葉。

この場においても相変わらずな光希。

そんな喧騒の中、「……約束したんだ」という彼女の小さな呟きを善逸の耳が捉える。


大丈夫
きっと大丈夫

信じろ


善逸は扉の前で手を痛いくらいに握りしめていた。


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