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雷鳴に耳を傾けて【鬼滅の刃】我妻善逸

第79章 命の呼吸


そして更にその翌日、光希の腹が激しく痛みだす。

「……ぐ…、……はっ」

畳にうずくまる光希。
昼ご飯を作っていた善逸が気付いて部屋に駆け込んできた。

「光希!!」
「善逸さ……っ、産まれる、かも」
「えっ、でもまだ、」
「早産……、……っ、」

善逸は自分の心臓が飛び跳ねるのを感じた。

状態の良くない光希の子宮では胎児の成長が悪く、平均より小さいと言われていた。予定日を超えて腹にいることが理想と医者は言っていた。
それが、一ヶ月前に産まれてしまう。

手が震える。
それでも、善逸は大きく息を吸った。すっと彼女に近付き、うずくまる背中に手を当てる。

「わかった。すぐに病院行こう。大丈夫だよ」

落ち着いた声で話しかける。

「破水は」
「してない」
「途中でするかもな。これ巻いていこう。ちょっと体勢変えるぞ」

善逸は大きめの手ぬぐいを彼女の腰元に巻きつけた。

光希は痛みに耐えながら善逸を見ている。
善逸は冷や汗で張り付いた彼女の前髪をそっと払ってやる。

「準備してくる。すぐ戻る。ここに居て」
「うん」

善逸は立ち上がって部屋を出ていく。
部屋の側で震えていたあかりに上着を着せて背負い、落ちないように布で自分の体に固定する。

火の始末をして、昼ご飯用に作っていたおにぎりを手早く包んで懐に入れた。
財布も懐に入れる。

……落ち着け!俺が取り乱しちゃ駄目だ。落ち着け!落ち着け!

善逸は目を閉じて、荒くなっている呼吸を整える。

「お父しゃん…」

背中から不安そうな声がした。
善逸は目を開き、微笑みを浮かべる。

「今から母さん連れてお医者さんのところに行くぞ。お利口さんにできるな、あかり」
「できるよ。お母しゃん、だいじょぶ?」
「うん、今、頑張ってるんだ。母さんは頑張り屋さんだから、大丈夫だよ」

善逸はあかりを背負ったまま部屋に走る。

「……いっ…、はぁ…はぁ……ぐ……」
「光希、お待たせ。行こう」
「うん、あり…と、善逸……」
「抱えるぞ」

善逸は光希を横抱きに抱える。

「はぁ…はぁ……、いっ……!」
「痛いよな、ごめんな」
「だ…じょぶ……」
「走るぞ」
「……お願いします。無理…しない…でね」

善逸は前に光希を抱き、あかりを背負って家を飛び出した。

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