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雷鳴に耳を傾けて【鬼滅の刃】我妻善逸

第79章 命の呼吸


翌日、光希に所謂『おしるし』と言われる出血が現れる。
予定日までまだ一ヶ月あることから、不正出血かもしれないと、とりあえず安静にして過ごす。

善逸は心配し過ぎて生きた心地がしない。
その不安やそわそわがあかりに伝わり、彼女も激しくぐずり倒す。イライラがつのってぶん投げた積み木が善逸の後頭部にパコーンと当たり、たんこぶが出来た。善逸に怒られてギャン泣きのあかり。

それらの騒がしい声を聞きながら、布団の中で光希は頭を抱える。


家中がドタバタして、年始挨拶に炭治郎や義勇に会いに行く予定だったが、見送ることにした。


「いってぇ……」

善逸は後頭部を擦りながら、居間に入ってきた。

「避けなさいよ」
「考え事してて油断したんだよ」
「なかなかの投擲術だね。三角を投げるあたり見どころがあるよ。攻撃力が一番高い」
「いや、この前新しく買った星型が一番強いだろ。まだまだだな」

善逸は光希の隣に座って彼女の頭を撫でる。

「身体、どう?」
「まだ出血してる」
「そっか……」
「あと、お腹に違和感」
「病院行こ。な?」
「んー……もう少し様子見るよ。出血も量は減ってきてるから」

光希の出産は危険なため、助産院や産婆に頼むのではなく、当時にしては珍しい病院での分娩を予定している。

「でも心配だよ」
「入院になったらあかり預けなきゃだし」
「うん……」
「あ。あかりは?」
「俺に怒られて庭に出てった」
「落とし穴かな」
「たぶんな」

あかりは腹を立てると、庭に行って土を掘る。土をいじることで心の折り合いをつけているようだ。好き勝手掘っているうちに、いつのまにか砂山作りなどの違う遊びに発展していき怒りを忘れていく。最近は落とし穴を仕掛けてきたりする。

「お父しゃんの、ばか!」

庭からあかりの声がして、二人は苦笑いをする。

「……怒られても、めげずにすぐにやりかえす方法を考える。本当に誰かさんにそっくりだな」
「でも怪我させたんだから、それに関しては善逸さんに謝らないとね。落ち着いたらごめんなさいできるかな」
「きっと謝ってくるよ。あかりは俺のこと大好きだから」
「今は、ね。思春期になったら嫌われると思うから覚悟しときなよ」
「……無理。泣く」
「あはは」

光希が笑うと、お腹もぽこぽこと動いた。


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