• テキストサイズ

雷鳴に耳を傾けて【鬼滅の刃】我妻善逸

第78章 【続編】幸せの続き


「出産が命懸けなのは、みんな同じだよ」
「うん」
「私の仕事は、ややをこの世界に送り出すこと」
「……うん」
「それが出来れば万々歳だと思ってるよ」
「うん。でも、光希もちゃんと帰ってきてくれよ」
「善処する」
「駄目、約束して」
「うーん……どうだろうなぁ」

光希は苦笑いを浮かべる。

「約束してよ、光希。どんなにしんどくても、生きることを諦めないって。……俺のところに戻ってくるって」

顔は見えないが、善逸が泣いているのがわかる。不安なのだろう。

「…………」
「約束!!」
「………うーん」
「約束してくれるまで俺は離れないぞ」


光希はふと、冷たかった布団が暖かくなってきたことに気が付く。

人の温もり。善逸の匂い。
当たり前のようにいつも側にあったもの。
子どもの頃からずっと変わらずに大好きな、最も安心できる場所。

光希の口元が弧を描く。

「……本当にもう、ハタチになっても泣き虫なんだから」
「ごめんなさいねぇ」
「困ったもんだ」
「だってぇ……」
「こりゃ、まだまだ私が側にいて、手ぬぐい渡してあげないと駄目だね」
「そうだよ」

冬は冷たい善逸の手足も、ぽかぽかと温まってきた。寄り添い合う暖かさで、二人の頬が赤みを帯びる。

「仕方ないから、約束してあげる」
「ありがと」
「頑張るよ」
「うん、頑張って」


善逸はそっと体を離すと、両手で光希の頬を包み込む。

「愛してるよ、光希」
「私も」

善逸はゆっくりと目を閉じて、光希に口付けをした。何度も繰り返される、蕩けてしまいそうな甘くて優しい口付け。

光希の唇を味わいながら善逸は祈る。


どうか
俺の前から消えてしまわないで

こんなにも好きなんだ
大切なんだ
俺の命なんかより
ずっとずっと大切なんだ

失いたくない……
絶対に……

どうか……どうか………


また彼の目からぽろぽろと溢れる涙。
唇を合わせながら、光希の指が善逸の涙を拭う。彼女は笑っているようだった。

/ 1083ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp