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雷鳴に耳を傾けて【鬼滅の刃】我妻善逸

第78章 【続編】幸せの続き


善逸は光希の隣に座り、彼女に半分毛布をかける。

「調べ物?」
「……ううん」
「じゃあ何?」
「名前、どうしようかなって」

「名前?」
「この子の」
「早くね?」
「早くないでしょ。どうせ候補上げるまでは私の仕事なんだから」

光希は笑うが、善逸はゾクリとする。

これも、死支度か

ややが産まれたとき、自分は死ぬかもしれない。彼女がそう考えている気がした。


「産まれてからでいいだろ。性別もわかんねえんだ」
「男も女も決めておけばいいでしょ。産まれてからはお世話が大変なんだから。決めておかないと」

光希は紙に鉛筆を走らせる。
善逸は憮然としながらも、紙を覗き見る。

「『善』の字、入れる感じなんだ」
「うん。男の子ならね」
「俺なんかの字、入れちゃって大丈夫?」
「あはは、卑屈だなぁ。大丈夫だよ。入れようよ。『逸』の方を使ってもいいけど……やっぱり『善』かな。かっこいいし」
「かっこいいか?」
「かっこいいよ。善くん」
「……善くんはやめろ」

善逸が顔を赤くする。
光希がくすくす笑う。

「ほら」

光希が辞書の『善』の字が書かれた頁を見せる。指で指された場所を善逸が見る。

「『善』にはさ、いい意味しかないの。そういう字って、なかなかないんだよ」
「へえ、そうなんだ」

善【意味】
よい。正しい。好ましい。立派な。
よくする。上手に。十分に。
親しむ。仲が良い。睦まじい。

「仲が良いとかの意味もあるんだな」
「そうだね。当然だけど、『善』は『悪』の反対。凄くいい字だと私は思う」
「俺、名前負けしてんのな」
「ちっとも負けてないよ」
「はは、ありがと」
「この字は善逸さんそのものだと思うよ。いい名前もらったね」
「……うん。そうだね」
「だから、この子にも付けてあげたい」
「うん」

善逸は光希を抱きしめる。

「光希、……ありがと」

前に自分が言った言葉。

『名前は親が子どもにあげる初めての贈り物』

善逸は、自分についている文字がそんなに良いものだと知らなかった。考えたこともなかった。自分の両親も自分にちゃんと贈り物をくれていた。

それを知って心が少し暖かくなった。

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